
ドナルド・トランプ米大統領とウラジーミル・プーチン露大統領の15日のアラスカ首脳会談を前に、ウクライナ戦争の休戦や領土交換が焦点となる中、両国がイスラエルの西岸占領に類似するモデルについて協議したと報じられた。
英紙タイムズは13日、米国家安全保障会議に近い情報筋の話として、数週間前にトランプ大統領のスティーブ・ウィトコフ中東担当特使が、ロシア側の担当者との協議で同様のモデルを提示したと伝えた。
このシナリオでは、ロシアが占領下のウクライナを自らの統治機関を通じて軍事・経済的に統制し、1967年以降のイスラエルによるパレスチナ支配をなぞる形となる。
ウィトコフ特使は、ウクライナ憲法の制約を回避し、国民投票を経ずに領土を譲渡できるとする米国内の一部の主張を支持しているとされる。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は領土譲渡を拒否しているが、占領モデルは3年半に及ぶ戦争の休戦を可能にする仕組みになり得るとの見方が出ている。
占領モデルではウクライナの国境は変わらない。西岸地区が58年間変わらずイスラエルの支配下に置かれてきたのと同様だ。
ある情報筋は「ウクライナは主権を放棄しないが、現実には占領地となる。その構図はパレスチナと同じだ」と述べた。
ホワイトハウスのアナ・ケリー副報道官は完全なフェイクニュースで、でたらめな報道だと強く批判し、タイムズは信頼できない情報源に頼っていると切り捨てた。さらに「いかなる時点でもそのような議論は誰とも行われていない」と語った。
イスラエルの西岸占領は国際司法裁判所(ICJ)が違法と判断している。米国はこれを認めず、ロシアは部分的にしか認めていない。
ICJは2022年3月、13対2の票決でロシアに対しウクライナでの軍事活動の即時停止を命じた。ロシアと中国の裁判官は反対した。命令はロシアに拘束力を持つが、ICJには執行手段がなかった。
国連総会は昨年9月、イスラエルの西岸占領に関し124対14で反対決議を採択し、43カ国が棄権した。決議はイスラエルに12カ月以内の軍撤退と新規入植地建設の即時中止を求めた。米国とともに反対したイスラエルは決議を無視し、英国は棄権した。
タイムズは西岸占領モデルに照らせば、残された課題はロシア占領地域の境界線の確定だけであり、プーチン大統領はアラスカでの首脳会談前にその線をできる限り広げようとしていると報じた。
トランプ大統領のセバスチャン・ゴルカ大統領副補佐官は5月、米メディア「ポリティコ」のインタビューで「我々は現実の世界に生きている」と述べ、「中東であれウクライナであれ、最も重要なのは流血を防ぐことだ」と語った。
イスラエル軍は1967年の第三次中東戦争でヨルダン軍からヨルダン川西岸地区を占領し、その結果、数百万人のパレスチナ住民がイスラエルの支配下に置かれた。
一方、パレスチナは領土の管理権を一定程度維持し、1990年代には自治政府も設立した。パレスチナ人はイスラエル軍の検問や巡回を受け、ヨルダン川西岸地区やガザ地区、東エルサレムなど他のパレスチナ地域に移動するにはイスラエルの許可が必要だった。
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