
米政府がUSスチールとMPマテリアルズに続きインテルの株式も保有することになり、米経済が中国やロシアのような「国家資本主義」に近づいているという懸念が浮上している。
23日(現地時間)、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、政府があたかもアクティビスト投資家のように企業経営に直接介入し利益を追求しているとの専門家の懸念を報じた。米国のドナルド・トランプ大統領率いる米政府は、半導体、鉄鋼、鉱山などの主要企業に対し、国家安全保障や補助金支給などを理由として積極的な株式取得を求めている。
トランプ大統領は22日、SNSの「トゥルース・ソーシャル」で「米国がインテルの株式10%を完全に所有し、支配する」と発表した。これにより、米政府は約89億ドル(約1兆3,118億円)相当の株式を保有するインテルの大株主になった。
先月、米国防総省はレアアース企業である「MPマテリアルズ」に4億ドル(約589億4,983円)を投資し、株式15%を保有する大株主になった。さらに、6月には「USスチール」を日本に売却する際に、重要な経営事項に対する拒否権を行使できる「黄金株」を取得した。また、半導体企業「エヌビディア」および「AMD」に対しては、中国向け半導体売上の15%を政府に納付するよう求めた。トランプ大統領は、これらの措置を商取引的な合意と呼び、自身の功績として誇示している。
NYTは、関係者の話として、トランプ政権があらゆる形で政府が介入できる企業を徹底的に探しているとの見解を伝えた。業界内では、政府の政策に対応するために各社が慌ただしく動いているという。法律事務所シドリー・オースティン(Sidley Austin)の企業防衛実務共同議長、カイ・リーケフェット氏は「私と話をした、政府の補助金や支援金を受けているほぼすべての企業が現在この問題を懸念している」と述べた。
企業は、トランプ大統領の逆鱗に触れないよう、DEI(多様性・公平性・包括性)に関連する表現をウェブサイトから削除し、大統領をより頻繁に訪問するよう助言を受けているという。
専門家らは、政府の市場への参加が、従来の自由市場体制の中核国であった米国が「国家管理資本主義(state-managed capitalism)」に類似した体制へ移行する兆候になる可能性があると予測している。国家管理資本主義とは、国家の利益や政治的目的のために政府が市場の自由を制御する体制であり、中国やロシアがその代表例として挙げられる。
過去にも、2008年の金融危機など特定の時期に米政府が企業に介入した事例はあったが、専門家らは、今回の介入は従来とは異なり、崩壊寸前の企業を対象にしたり、世界経済の破綻を防ぐためのものではないと指摘している。
メリーランド大学のディビッド・シシリア教授は、政府が中国に対する半導体売上の一部を受け取る措置について「いかに寛容に解釈しても、成功を目的とした強奪だ」と批判した。インディアナ大学のサラ・バウアレ・ダンズマン教授(Sarah Bauerle Danzman)は「政府が一度企業の戦略的意思決定に関与すると、その企業の意思決定は市場原理に左右されなくなる」と述べた。
また、政府が企業経営に介入した際、一般株主を保護する仕組みが欠如している点も問題視されている。ニューヨーク大学のエドワード・ロック教授は「支配株主が私的利益を追求したり高額な報酬パッケージを要求したりする場合には対処の方法がある。しかし、例えば政府が企業の生産拠点の海外移転を中止するよう要求する場合、その分析や対処の規定は存在しない」と強調した。
ホワイトハウスは、企業への投資は国家安全保障のためであり、重要企業への出資が自由市場経済を弱体化させるという主張に対して反論している。ホワイトハウスの関係者はインテルに関して「この会社は鍋やフライパンを作る会社ではない」と説明し、「国家安全保障に極めて重要であるため、株式取得は正当化される」と述べた。
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