
ウクライナ戦争の停戦交渉が停滞する中、26日(現地時間)、ロシア軍が前線を突破し、ウクライナ中部のドニプロペトロウシク州にまで進軍したことが確認された。ロシアが自国領編入を主張する東部4州を越え、中部にまで西進したことで、両国間の停戦協議は一層複雑さを増す見通しだ。
『AFP通信』などによると、ウクライナのドニプロ作戦戦略軍報道官であるヴィクトル・トレフボフ氏は同日、「ロシア軍は(ドニプロペトロウシク州に)侵入し、現在も戦闘が続いている」と述べた。ウクライナ側が同州にロシア軍が入ったことを認めたのは今回が初めてだ。前日にはロシア国防省が同州境界付近のザポリスケ村を制圧したと発表したが、ウクライナ軍総参謀本部はこれを否定していた。
ドニプロペトロウシク州は、ロシアが実効支配を進め自国領編入を主張する東部4州(ドネツク、ルハーンシク、ザポリージャ、ヘルソン)ではない新たな地域だ。ロシアが完全支配を要求しているドネツク州と接しており、戦前は人口300万人を超える中工業地帯で産業の要衝だった。
ロシアは先月、同州の一部村を制圧したと主張し進軍拡大を誇示したが、ウクライナ側は一貫して否定してきた。しかし今回の発表で情勢が一変した。米ロ首脳会談後も停戦協議が停滞する中、両国の領土攻防が拡大し、停戦合意は一層困難になったとみられる。
さらに両国は石油・ガス・電力などエネルギー施設への相互攻撃を強め、交渉の切り札にしようとしている。『ニューヨーク・タイムズ(NYT)』によれば、ウクライナ軍は今月だけで少なくとも10回以上、ロシア南西部や中部の製油施設を攻撃し、今月中旬までにロシアのガソリン卸売価格が12%上昇した。ロシア側もウクライナのガス、電力、熱併合発電所を集中的に攻撃し、ウクライナの年間ガス需要の約5%が被害を受けたとされる。
ドナルド・トランプ米大統領は「対ロシア経済制裁」を改めて持ち出し、苛立ちを隠さなかった。トランプ氏はこの日、ホワイトハウスでの閣議後に記者団に対し「私は戦争が終わるのを望んでいる」と述べ、「われわれには経済制裁がある」と警告した。さらに「世界大戦にはならないが、経済戦争にはなる。経済戦争はロシアにとっても不利だ」と語ったうえで、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領についても「ゼレンスキーも無実とは言い切れない。タンゴを踊るには2人が必要だ」と指摘した。
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