ドイツ・フランス、世界最大の戦闘機開発で対立…総額17兆円規模のFCAS計画に暗雲

フランス、ドイツ、スペインが共同で進める世界最大規模の戦闘機開発プロジェクトが、参加国間の対立により頓挫の危機に直面している。
『ロイター通信』は27日(現地時間)、ドイツがフランスとの共同開発計画から撤退する可能性を示唆したと報じた。
3カ国は現在、「ユーロファイター」や「ラファール」などの後継となる次世代戦闘機の開発を進めており、この計画は「未来戦闘航空システム(FCAS)」と呼ばれる。次世代巡航ミサイルや編隊飛行可能なドローンの開発も含まれる大型プロジェクトだ。
この事業は2017年7月、エマニュエル・マクロンフランス大統領と当時のアンゲラ・メルケル独首相の合意をもとに始動。2019年6月にはスペインも加わった。参画するのは、エアバス、ダッソー(フランス)、MTU(ドイツ)、インドラ・システマス(スペイン)といった大手防衛企業で、各国政府が出資している。
FCASには最大1,000億ユーロ(約17兆1,420億円)が投じられ、2040年までに新戦闘機を配備する計画だった。しかし開始から8年が経過した現在も、計画は初期段階を抜け出せていない。
『ロイター通信』によれば、ドイツ議会の国防委員会に所属するクリストフ・シュミット議員は前日、「フランスがプロジェクトの次段階を妨げている。フランス側が単独での主導権を要求しているためだ」と批判。「意見の食い違いによって、今年末に予定されていた試作機開発の開始が遅れる可能性がある」と警告した。
さらに同議員は「政府はこの計画を継続するのか、中止するのか早急に判断しなければならない」と述べ、決断を迫った。
ドイツ・フランスの長年の対立、その背景にはフランスの野心か
フランスはプロジェクト当初から、核心技術の決定権と主導権を自国が握るべきだと主張してきた。これに対し、ドイツは投資額に見合った技術的・産業的成果の確保を強調し、フランスの主導権要求に公然と反発している。
対立が激化した背景には、プロジェクトの作業分担を3カ国で33%ずつ分けるという当初の合意にもかかわらず、フランスが約80%の出資比率と業務分担を要求したことがある。
昨年7月、ドイツのシュミット議員は「これはドイツの資金でフランスの事業を助けるようなものだ」と強く批判。「フランスが80%の要求を撤回しなければ、プロジェクトに終止符を打つことになるだろう」と警告した。
頑なな姿勢を崩さないフランスに対し、ドイツは「プロジェクト脱退」という圧力をちらつかせ始めている。シュミット議員は、ドイツ、英国、イタリア、スペインが共同開発に成功したユーロファイターを例に挙げ、「国家的あるいは欧州的利益にかなうのであれば、現時点でドイツとフランスがプロジェクトを離脱しても大きな問題にはならない」と述べた。
フランス「プランBはない」
フランスのエマニュエル・マクロン大統領とドイツのフリードリヒ・メルツ首相、両国の国防相らが今週会談し、FCASをめぐる問題を協議する予定だ。しかし、和解は容易ではないとの見方が強い。
フランス大統領府の関係者は25日、「フランスもドイツもFCASを推進する以外に選択肢はない」と述べ、現在の対立を「一時的な困難」と強調した。
同関係者はさらに「参加企業間では、緊張は近く解消されるとの楽観的な見方が共有されている」とし、「次回の会談で両国は意見の相違を調整するだろう」と語った。
ただし、フランスが事業の主導権を握ろうとしているとのドイツ側の不満については、具体的な言及は避けた。
「和解点が見出せなければ、欧州の対米依存が高まる」
FCASをめぐり、フランスが強力な主導権を求める背景には、欧州内で自国中心の戦略的自立を確保し、米国主導の軍事システムへの依存を減らす狙いがある。そのためフランスは、独自の軍事技術基準やシステムを固守する姿勢を崩していない。
一方のドイツは、NATO(北大西洋条約機構)など多国間協力による効率性を重視し、共同防空システムの整備を優先している。両国の対立が深まるなか、FCASの遅延を受けてドイツは米国製「F-35」戦闘機の導入を決定しており、これがさらに火種となっている。
各国の国益や産業利益、軍事技術の主導権、そして欧州の戦略的自立に対する見解の違いが、総額1,000億ユーロ(約17兆1,420億円)規模の巨大プロジェクトを停滞させている。
専門家は、フランスとドイツが妥協点を見いだせなければ、欧州は米国主導の「F-35プログラム」への依存度を一層高める可能性があると指摘する。これはフランスにとって最も避けたいシナリオであり、今週予定される会談で両国が歩み寄れるかどうかに注目が集まっている。
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