「トランプ相互関税」の正当性揺らぐ…品目関税強化で抜け道探る可能性

ワシントン・ポスト紙は「控訴裁判所の判断はホワイトハウスに大きな打撃となり、第2期トランプ政権の主要政策の多くを阻む可能性がある」と報じた。
今回の判決は、米国際貿易裁判所(CIT)が5月に「違法」と判断してからわずか3か月後に下された異例の早さだった。関係者によれば、通常12〜20か月かかる控訴審が迅速に結論を出した背景には、裁判官の間で「相互関税はIEEPAの権限を逸脱している」という認識が共有されていたことがある。
●トランプ大統領「判決に関わらず関税は維持」
控訴裁判所は「IEEPAは大統領に国家非常事態への対応権限を与えるが、そこに関税は含まれない」と明記し、さらに大統領の関税権限に対する「手続き上の安全装置」が存在しない点を問題視した。
トランプ大統領が相互関税を導入した直後、ニューヨーク州の中小ワイン輸入業者「VOSセレクション」など5社が「多大な損害を受けた」として提訴し、民主党支持が強いオレゴン州を含む12州も「非常事態宣言の権限は大統領ではなく議会にある」と主張し、訴訟に加わっていた。
CITは「議会を経ずに関税を発動するのはIEEPAの範囲を超える」と全会一致で判断した。今回の控訴裁判所も同様に違法と結論づけたが、トランプ大統領は関税政策を堅持する姿勢を崩していない。
30日にも自身のSNS「Truth Social(トゥルース・ソーシャル)」で「もし裁判所が関税を承認すれば、米国は史上最高の年を迎えるだろう」と投稿した。
その後、CITは裁判官3人全員一致で「大統領が議会を経ずに関税政策を展開するのは、IEEPAが大統領に付与した権限を超えている」と判決した。トランプ大統領側が控訴した結果、今回の控訴裁判所は「国家非常事態に対応するためのIEEPAの制定目的に、関税や課税等は含まれていない」と判示した。
●最高裁での行方と「迂回策」
連邦最高裁判所は保守派判事6人、リベラル派判事3人で構成されている。ゴーサッチ、カバノー、バレットの各判事は第1期トランプ政権下で任命された。だが、ロイター通信は「最高裁が古い法律を拡大解釈して新たな権限を大統領に与えることには慎重だ」と分析し、ニューヨーク・タイムズも「最高裁で勝訴する保証はない」と伝えた。
一方で、たとえ最高裁で敗訴しても、トランプ大統領が「迂回策」を講じる可能性は大きいとされる。具体的には、IEEPAではなく通商拡大法232条に基づき品目別関税を拡大する案や、通商法122条を活用して最大15%の関税を150日間課す案などが取り沙汰されている。判決が出てもその発効時期を遅らせ、実効性を維持する手法も考えられている。
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