ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は31日(現地時間)、ウクライナ戦争の早期終結への期待を戒め、長期戦に備える姿勢を示した。ドナルド・トランプ米大統領の仲介で一時進展の兆しを見せた和平交渉が、ロシア側の非協力で行き詰まり、悲観的な見方に転じた。一方、欧州委員会は一部の欧州諸国が派兵を具体的に検討していると明かし、安全保障アプローチを巡る欧州内の微妙な温度差が浮き彫りになった。
メルツ首相はこの日、第2ドイツテレビ(ZDF)のインタビューで「年内の停戦実現への希望は捨てていないが、幻想は抱いていない」と述べ、「戦争の長期化に備えている」と語った。そして「最優先事項はウクライナ軍が自国防衛を継続できるよう支援すること」であり、「ウクライナの降伏と引き換えに戦争を終結させる考えは毛頭ない」と強調した。

メルツ首相はわずか2週間前、和平交渉への期待感を示していた。18日のトランプ大統領との会談直後、トランプ大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領の電話会談内容を根拠に「2週間以内にロシアとウクライナの首脳会談が開催される」と真っ先にメディアに伝えた。しかし、ロシアが早期会談の可能性を否定し戦場での攻勢を強めたため、立場を転換した。メルツ首相は28日、フランスのエマニュエル・マクロン大統領に「プーチン大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の会談は実現しそうにない」と伝えたとされる。
ウクライナへの具体的な安全保障措置を巡っても、欧州内で意見が分かれている。メルツ首相は西側軍の派兵について「現時点で地上軍の派兵を議論している国はない」と一線を画した。一方、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長はフィナンシャル・タイムズ(FT)とのインタビューで、英国、フランス、エストニアなどが参加する「有志連合」が安全保障の一環として軍隊派兵を具体的に協議していると明かした。
米国が地上軍不介入の原則を堅持する中、欧州の一部諸国が派兵を検討する構図だ。だが、ロシアはNATO(北大西洋条約機構)加盟国軍の駐留を断固として拒否しており、実際に派兵が行われれば戦争拡大のリスクが高まる。西側首脳は4日、フランス・パリに集まり、この問題を含むウクライナの安全保障策について更なる協議を行う予定だ。
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