
習近平中国国家主席は、ロシアやインドなどが参加する上海協力機構(SCO)首脳会議において、安全保障対応機構および開発銀行の設立を正式に提案した。米国の圧力に対抗し、SCOをグローバル・ガバナンスの代替機構として育成しようとする意図があるとみられる。世界の首脳がドナルド・トランプ米大統領への不満を媒介に結束を強めているとの分析も出ている。
習主席は1日、中国天津で開かれたSCO首脳理事会第25回会議で演説し、「安全保障上の脅威と課題に対応する総合センターと麻薬対策センターを速やかに稼働させ、SCO開発銀行を早期に設立し、加盟国の安保と経済協力を支援する」と述べた。
SCOは2001年に中国、ロシア、中央アジア4か国で発足した多国間協議体である。2017年にインドとパキスタン、2023年にイラン、2024年にベラルーシが加わり、現在は10か国に拡大した。当初はテロや分離主義対策など安保協力に重点を置いていたが、近年は経済・金融・文化へと協力分野を広げている。中国はこれをBRICSと並ぶグローバルサウス(新興国・途上国)結集の中核と位置づけ、米国に対抗する枠組みへと育成しようとしているとされる。
習主席は米国を念頭に、「冷戦的思考や陣営対立、いじめ行為に反対しなければならない」と間接的に批判したうえで、「国連や世界貿易機関(WTO)を中心とする国際秩序を守り、公正で合理的なグローバル・ガバナンスを構築すべきだ」と強調した。
また習主席は、SCOにおける中国の経済的影響力も示した。中国によるSCO加盟国への累計投資額は840億ドル(約12兆3,600億円)を超え、二国間貿易額も年間5,000億ドル(約73兆5,000億円)を突破したという。さらに「加盟国支援のため100件の『小さくても素晴らしい』民生プロジェクトを推進し、年内に20億元(約400億円)を無償援助する」と述べた。加えて「今後3年間で銀行連合加盟行に100億元(約2,000億円)の新規融資を提供する」と明らかにした。
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