「関税がなければ米国も存在しなかった」トランプ大統領、裁判所を痛烈批判
米控訴裁も「相互関税は違法」と判断
USTR「判決にかかわらず貿易交渉は継続する」

ドナルド・トランプ米政権が貿易相手国に課した相互関税をめぐり、連邦控訴裁判所が一審に続いて違法と判断したことを受け、トランプ大統領や政権幹部が司法を強く批判している。今後、保守派が多数を占める連邦最高裁が政権寄りの判断を下すかどうかに注目が集まっている。
トランプ大統領は先月31日の判決後、「関税と、すでに我々が得た数兆ドルがなければ、米国は完全に崩壊し、軍事力も即座に失われていただろう」と不満を表明した。そのうえで「裁判所は政治的に偏向している。すべての関税は依然として有効だ」と述べ、裁判所の判断にかかわらず独自の関税政策を維持する姿勢を示した。
米通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表も同日、米フォックス・ニュースに出演し「我々の貿易パートナーは協議を極めて緊密に続けている。裁判所の判断に関係なく、それぞれの交渉を推進している」と強調した。さらにホワイトハウスのピーター・ナバロ通商・製造業政策担当顧問は、判事らを「法服を着た政治家」と批判し、訴えを起こした中小企業5社を「安価な中国製の粗悪品を輸入する権利を守ろうとしているだけの極小企業だ」と非難した。
トランプ大統領は今年初めの就任直後、中国やカナダ、メキシコからの合成オピオイド「フェンタニル」の流入を理由に最大25%の関税を課した。さらに4月2日には「解放の日」と銘打ち、58カ国に対し一方的に相互関税を宣言した。これに対し、米国の中小企業5社と12州政府が同月、連邦国際貿易裁判所(CIT)に違憲訴訟を提起した。CITは5月、関税措置は国際緊急経済権限法(IEEPA)の範囲を逸脱しているとして原告の訴えを認め、今回の控訴審も同様の判断を下した。
トランプ政権は最高裁に上告する方針で、米メディアは「トランプ政権は、6対3で保守派優位の最高裁が自らに有利な判断を下すと期待しているだろう」と予測している。ナバロ氏も最高裁判決の見通しについて「非常に楽観的だ」と述べ、「もし我々が敗訴すれば、トランプ大統領の言う通り米国の終わりになるだろう」と語った。
仮に最高裁が一・二審を覆し関税の適法性を認めれば、トランプ政権は関税政策を一段と強化する可能性がある。一方、最高裁も違法と判断すれば打撃は避けられないものの、トランプ政権が他の手段で関税を継続するとの見方も少なくない。ただし、こうした不透明な状況自体が国際取引の混乱を広げているとの指摘もある。ブルームバーグは「今回の判決で世界貿易の混乱がさらに拡大している」と伝えた。
米通商代表部副代表を務めたウェンディ・カトラー氏(アジア・ソサエティ政策研究所副所長)は「多くの貿易相手国は米国と基本的な合意を結んでいるが、一部はまだ交渉中だ。間違いなく混乱と困惑を深めている」と語った。
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