
アップルが音声アシスタント「Siri」を大幅に改良し、来年春にAIを活用したウェブ検索機能を導入する計画であることが分かった。
3日(現地時間)、米ブルームバーグの報道によると、アップルはまずSiriに新機能を搭載し、その後SafariブラウザやiPhoneの検索機能「Spotlight」にも拡張する案を検討しているという。新システムは「ワールド・ナレッジ・アンサーズ(World Knowledge Answers)」と呼ばれ、単なる音声操作を超えて、インターネット全体の情報を要約して提供する「回答エンジン」になると予測されている。
新しいSiriは、テキスト・写真・動画・位置情報を組み合わせた結果を提示し、AIによる要約機能を通じてより簡潔で正確な回答を目指すという。現行のSiriは簡単な情報提供には便利だったものの、一般知識の検索や複雑な質問ではGoogle検索やChatGPTに頼らざるを得ないという限界があった。
注目されるのはグーグルとの連携である。
グーグルの最新AIモデル「Gemini」が、Siriの要約や計画機能の一部を担う形で試験導入されているという。当初はAnthropicの「Claude」が技術評価で優位に立ったが、年間15億ドル(約2,223億7,937万円)超に上る利用料が障害となり、最終的に柔軟な条件を提示したグーグルが選ばれたと報じられている。
アップルは伝統的に重視してきたプライバシー保護を維持する方針で、端末内のデータ検索は独自の「Apple Foundation Models」で処理する予定だという。一方、外部のウェブ検索や要約機能のみ第三者のAIに依存する仕組みとし、「ユーザーデータを外部に渡さない」という理念と最新AI技術の両立を図る狙いとみられる。
しかし、アップルは依然として厳しい状況にある。ここ数年、グーグルやマイクロソフト、OpenAIなど競合に比べAI革新で後れを取ってきたとの評価が広がっている。2011年に登場した当時は革新的だったSiriも進化が停滞し、「古い技術」の象徴とみなされるまでになっていた。
人材流出も深刻だ。7月にはApple Foundation Modelsチームを率いていたルーミン・ファン氏がメタに移籍し、10人以上のメンバーが同行したほか、最近も主要研究者がOpenAIやAnthropicへ移籍している。チームの弱体化はアップルの独自AI開発力に打撃を与える可能性がある。
市場環境も厳しさを増している。アップルは米裁判所の判断により、自社端末でグーグルを既定の検索エンジンとして維持できることになり、年間200億ドル(約2兆9,651億5,760万円)規模の収益源を確保した。しかし同時に、急速に拡大するAI検索市場は従来の収益構造そのものを揺るがしている。
OpenAIのChatGPT、グーグルの「AI Overview」、Perplexityなどが普及し、ユーザーが従来のキーワード検索から「AI回答エンジン」へと急速に移行しているためだという。
業界では、アップルが今回のSiri改良によってAI競争で存在感を取り戻せるか注目が集まっている。新たなAI検索・要約機能がユーザー体験に革新をもたらさなければ、アップルが「出遅れ」のイメージを払拭するのは難しいとの見方も出ている。
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