
米紙『ニューヨーク・タイムズ(NYT)』は3日(現地時間)、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、自身の「アウルス・セナート」
リムジンを個別外交に積極活用し、外国訪問中も自国同様の環境や優位性を確保していると報じた。
プーチン氏は1日、中国・天津で開催された上海協力機構(SCO)首脳会議の際、外国首脳の中でも特に重要視されるインドのナレンドラ・モディ首相を自身の「アウルス・セナート」リムジンに同乗させ、45分間の非公開会談を行った。この「リムジン密会」が長引いたため、他の首脳は待たされることとなったという。
さらに、プーチン氏は3日にも北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記をリムジンに同乗させ、両国間の友好関係を誇示した。
ロシア大統領府は、この二度の同乗を積極的に広報しており、ロシアのメディアは、特にモディ首相との同乗が即興的に行われたと報じている。
しかし、二人の乗車場面は、モディ首相と対立するドナルド・トランプ米大統領に向けて結束を示す場面となった。
ロシアのジャーナリスト、パべル・ザルビン氏は、プーチン大統領に唯一密着できる人物とされる。ザルビン氏はレッドカーペット上に停車していたプーチン氏のリムジンをスマートフォンで撮影し、興奮気味に「たった今、プーチン氏とモディ首相が共に車に乗ることになった」と伝えた。
ザルビン氏が「数分前に決まった、誰も予想していなかった出来事だ」と伝えると、モディ首相とプーチン大統領はアウルス・リムジンに乗り込み、記者団が一斉に押し寄せた。
ロシア国営テレビは、この場面を大きく取り上げた。ウクライナ侵攻により国際社会で孤立しているプーチン氏が、中国で厚遇を受けていることを印象づける狙いがあったとされる。
プーチン氏はその後、リムジン内でアラスカでのトランプ氏との会談について語り、会談から3日後にモディ首相に電話で結果を伝えたという。モディ首相は後に、プーチン氏のリムジン内で撮影された写真をSNSに投稿し、「プーチン氏との対話はいつも洞察に富んでいる」とコメントした。
プーチン大統領は、リムジンを首脳外交で積極的に活用してきた。
昨年は、モスクワを訪問したムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーンUAE大統領を乗せ、2018年にはエジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領を乗せた。
また、昨年2月には金正恩朝鮮労働党総書記に誕生日プレゼントとして贈り、数カ月後の平壌訪問時には金正恩氏と交互に運転をした。当時、ロシア大統領府は、プーチン氏が運転席で冗談を言うと金正恩氏が大笑いする様子を公開している。
プーチン氏は2005年にロシアを訪れたジョージ・W・ブッシュ元米大統領に、ソ連製「ヴォルガ・ガズ21リムジン」を運転させたこともある。ブッシュ氏は記者陣の前で自ら車を運転し、プーチン氏が「運転教習」をしてくれると冗談を交わしたという。
さらに2001年11月、プーチン氏が米国を訪問した際には、ブッシュ氏が自身のテキサスの牧場でピックアップトラックにプーチン氏を乗せて走らせたこともあった。先月のアラスカでの米露首脳会談では、ドナルド・トランプ米大統領がプーチン氏を自身の専用車「ザ・ビースト」に乗せる場面も見られた。
1990年代、ロシアの指導者たちは主に「メルセデス・ベンツ」などの西側製車両を使用していた。
アウルス・セナートは大統領専用車両として2013年に開発が始まり、2018年に完成した。エンジン開発にはドイツの「ポルシェ」と「ボッシュ」が協力し、この車は「ロシアのロールス・ロイス」とも称されている。
プーチン大統領は2018年に大統領職に復帰した際、初めてこの車を使用し、同年のフィンランドでのトランプ大統領との会談では、初めて海外に持ち出された。
アウルス・セナートは2021年から一般販売も開始され、プーチン大統領が乗るセナート等級の価格は4,850万ルーブル(約8,870万円)からとなっている。
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