
フランソワ・バイル首相率いるフランス内閣が8日(現地時間)、発足から9か月で下院の不信任決議により総辞職した。直前のミシェル・バルニエ前首相が3か月で失脚したのに続き、またもやフランス政府が短命に終わった。昨年1月のエリザベット・ボルヌ前首相辞任以来、20か月余りで4人目の首相辞任になる。さらに最低支持率に苦しむフランスのエマニュエル・マクロン大統領も野党から辞任・弾劾圧力を受け、フランス政局が再び混乱の渦に巻き込まれることになった。
フランス下院は同日、バイル政権に対する信任投票を実施し、信任194票、不信任364票で不信任を可決したとロイター通信が報じた。当日の下院議員定数は574名(3議席空席)で、不信任可決には288票が必要だった。フランス社会党を中心とする左派連合や極右の国民連合など野党のほとんどが不信任票を投じ、 与党連合「アンサンブル」と一部の右派議員のみが首相を支持した。フランス第五共和政史上、政府が下院の信任投票で失脚したのは今回が初めてだと、フランス紙「ル・モンド」は指摘した。バイル首相は2017年に就任したマクロン大統領が任命した6人目の首相だ。
バイル首相は7月15日、440億ユーロ(約7兆5,901億円)の予算削減と増税を含む来年度予算案の指針を発表した。フランスの公的債務は昨年時点で3兆3,000億ユーロ(約569兆2,600億円)に達し、国内総生産(GDP)比113%にも上る。これを受け、バイル政権は国防予算を除く政府支出を今年水準で凍結し、生産性向上のために祝日を2日削減するなどの案を提示した。
これに対し野党は、秋の通常国会が招集されれば直ちに政府不信任案を可決すると圧力をかけた。バイル首相は先月25日、自ら議会に信任投票を要求する賭けに出たが、結果的にこれが自らの足かせとなった。フランス大統領府のエリゼ宮は同日、「数日内に新首相を任命する」と発表した。
今回の不信任により、マクロン大統領は2年で5人目の首相を任命せざるを得ない事態に陥った。2023年のボルヌ前首相辞任以降、ガブリエル・アタル氏、ミシェル・バルニエ氏、バイル氏と、すべて予算・財政政策をめぐる対立により短命に終わった。バルニエ内閣は昨年12月、社会保障予算をフランス憲法第49条第3項で強行採決したことで、野党が提出した不信任案により崩壊した。
フランス下院では現在、進歩・保守・中道のいずれの陣営も絶対多数や相対多数を占めておらず、単独での政権運営が不可能な状況にある。マクロン大統領の任期が約18か月残る中、野党と予算案で妥協が成立しなければ、政府の崩壊が繰り返され、政局の混乱が長期化する見通しである。
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