「米国との貿易戦争」にカナダが対抗 LNG・原子炉・鉱山活性化へ
カーニ首相が600億カナダドル(約6兆3,700億円)規模プロジェクトを発表、雇用創出も狙う

カナダは米国との貿易戦争の中で自国への打撃を最小限に抑えるため、経済活性化プロジェクトを打ち出した。
英紙ガーディアンが11日(現地時間)に報じたところによると、カナダ政府は国家経済に活力を与えるため、液化天然ガス(LNG)施設や重要鉱物の鉱山、原子炉、港湾などの拡張事業を推進する。
まず、太平洋沿岸に位置する「LNGカナダ」のキティマット施設を拡張し、年間輸出能力を2,800万トンに倍増させる計画だ。
ジャスティン・トルドー前首相時代の自由党政権はLNG輸出の経済性に懐疑的だったが、マーク・カーニ首相は最近数か月にわたり欧州関係者らと会談し、カナダ産LNGの輸出に力を注いできた。
カナダはまた、オンタリオ州ダーリントンの原子力施設における小型モジュール原子炉やケベック州の港湾拡張なども進める方針だ。
こうした経済活性化プロジェクトを打ち出したのは、米国との貿易戦争がカナダ経済を不況に陥れる恐れがあるためだ。
カーニ首相は「米国はあらゆる貿易関係を根本的かつ急速に変化させており、その影響は即時的かつ深刻だ」と述べ、「現在の世界経済で起きているのは単なる転換ではなく断絶だ」と主張した。
同首相は「今後の道のりは容易ではない」としつつ、これらのプロジェクトが600億カナダドル(約6兆3,700億円)規模の経済効果をもたらし、数万人の雇用を創出すると強調した。
ただし、今回発表されたプロジェクトには、ここ数年政治的対立の要因となっていた新規パイプライン計画は含まれていない。
カナダは原油や鉱物など天然資源が豊富だが、これまで環境重視の政策方針の下、エネルギー開発事業を制限してきた。
しかし、アルバータ州では全国を横断する原油輸送パイプラインの建設を求める声が強く、野党の保守党も必要性を訴えている。
昨年4月の総選挙でトルドー前首相の後を継いで政権を握ったカーニ首相は、エネルギー開発に対する政府規制を緩和する意向を示しているが、今回の発表ではパイプラインは除外された。
ガーディアンによると、カナダは11月に第2弾となるプロジェクト一覧を公表する予定だが、そこにもパイプラインは含まれない見通しだ。
11月に発表される予定の一覧には、風力発電所や港湾の近代化、炭素回収プロジェクト、高速鉄道などが盛り込まれるとみられる。
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