
ブラジル最高裁第1部、5人中4人が有罪判断
トランプ大統領「驚きと不満」、ブラジルへの制裁も示唆
ブラジルで2022年大統領選挙の前後にクーデターを企て国家転覆を図ったなどとして起訴されたジャイル・ボルソナロ前大統領が、連邦最高裁判所(第1部)で有罪判決を受け、懲役27年3か月を言い渡された。
関連の司法手続きを「魔女狩り」と批判し、ブラジル産製品に50%の輸入関税を課してきたドナルド・トランプ米大統領は、今回の判決に「驚愕し、非常に不満だ」と表明し、制裁を示唆した。
ブラジル連邦最高裁は11日(現地時間)、第1部の審理でボルソナロ氏のクーデター企図、武装犯罪集団の組織、重傷害、文化財損壊などの容疑を審理し、判事5人中4人が有罪と判断したと発表した。大統領による憲政秩序の破壊に関するこの刑事事件は、ブラジル憲法に基づき最高裁が直接審理した。
ブラジル司法部門の「TVフスティシア」、「ラジオ・フスティシア」やYouTubeで生中継されたこの審理では、最高裁第1部の判事らが9日から順次、長時間にわたり有罪・無罪の判断根拠を説明した。
この日最後に意見を述べたクリスチアーノ・ザニン判事は「証拠によれば、ボルソナロ前大統領を中心に立法・行政・司法の三権を掌握し、新たな国家秩序を樹立するため非常機関を設置しようとしたという公訴事実は虚偽とは言えない」と指摘し、アレシャンドレ・ヂ・モライス判事ら他の3人も同趣旨の判断を示した。
唯一無罪と判断したルイス・フックス判事は「クーデターは孤立した行為や連携のない個人的抗議ではなく、現政権に対抗し得る資源と戦略的能力を持つ組織的集団の行動に起因する」と前置きし、「被告が民主的法治国家を暴力的に廃止しようとした十分な証拠は示されなかった」と述べた。
判事らはその後の量刑協議で、ボルソナロ前大統領に懲役27年3か月を科すことを決定した。現在、GPS追跡装置(電子足輪)を装着してブラジリアの自宅で軟禁状態にあるボルソナロ前大統領は、再審請求を通じて最高裁大法廷(11人)の判断を仰ぐ意向を弁護人を通じて明らかにした。
軍人出身のボルソナロ氏(2019~2022年在任)は、ワルテル・ブラガ・ネット元国防相ら側近とともに、2022年10月の選挙で勝利したルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ現大統領の暗殺計画および軍事クーデター共謀の容疑などで起訴されている。2023年1月8日にブラジリアで発生した選挙結果不服の暴動を扇動した疑いもある。
ボルソナロ前大統領とともに起訴されたブラガ・ネット元国防相ら主要側近7人も、ほとんどが有罪判決を受けたと現地メディアG1が伝えた。最高裁は説明資料で「被告8人は検察が本件の中核的役割を担ったと判断した人物だ」とし、今後も量刑決定に向けた議論が続くと明らかにした。
グローボTVなどブラジルメディアは、電子足輪を装着して自宅軟禁中のボルソナロ氏に最長40年の刑が科される可能性があると報じた。海外メディアは、今回の判決がブラジル国内の政治的分断を深め、米国政府の反発を招くと予想している。
とりわけ来年の大統領選を前に左派のルーラ大統領が4度目の立候補を示唆する中、最近の抗議行動で星条旗を掲げて結集を呼びかけるボルソナロ支持層との激しい対立が懸念される。
米国側の反応にも注目が集まっている。ボルソナロ前大統領と親しいトランプ大統領は「驚愕し、非常に不満だ(unhappy)」との反応を示したとロイター通信は報道した。トランプ大統領は従来からこの司法手続きを「魔女狩り」と批判し、ブラジル産製品に50%の輸入関税を課すなど内政干渉論争を引き起こしてきた。
米国でトランプ政権に対し父親の支援ロビー活動を行っているボルソナロ前大統領の息子エドゥアルド氏は、ボルソナロ前大統領への「人権侵害」を理由に、米国がグローバル・マグニツキー人権責任法に基づきブラジル最高裁判事への追加制裁を行うべきだと主張した。米政府は既にモライス判事に同法を適用している。
マルコ・ルビオ米上院議員は同日、自身のX(旧ツイッター)に「ブラジル最高裁が不当な判決を下した」と投稿し、「魔女狩りに相応する措置を講じる」と述べた。ボルソナロ前大統領側は再審請求を通じて最高裁大法廷の判断を求めるとみられている。
コメント0