「政治的両極化の象徴」か「若手改革派」か…マムダニ氏、NY初のムスリム市長なるか

史上初のムスリム市長、初のミレニアル世代市長、そして初の社会主義者市長
11月4日(現地時間)に行われる米ニューヨーク市長選で、民主党候補のゾーラン・マムダニ氏(34)が数々の新たな「里程標」を打ち立てようとしている。当初は無名に近かった新進政治家の旋風が続き、大物政治家らも次第に彼を認め始めた。投票日まで約50日余りとなった今、世論調査では圧倒的首位を走っている。トランプ政権の急進的な右傾化に嫌気を示した左派層の支持が集中し、「米社会の両極端現象の象徴」と評される。30代前半の政界の新星が、既存政治を揺るがす急進的な公約を掲げ、ニューヨーカーの支持を集めているとの見方もある。一方で、マムダニ氏の当選はウォール街に衝撃を与え、民主党の分裂を招くとの懸念もある。
ニューヨーク州のキャシー・ホウクル知事は14日の『ニューヨーク・タイムズ(NYT)』寄稿で「ニューヨークにはトランプ大統領に立ち向かう指導者が必要だ。私は困難に屈しない『幸せな戦士』の精神を大切にしてきた。マムダニ氏にその精神を見いだした」と述べ、公開支持を表明した。知事の支持表明は党主流派や大口献金者の賛同を呼ぶとみられる。マムダニ氏も15日、自身のX(旧Twitter)で「党の結束のために立ち上がった知事の支持と、トランプ大統領に対する決意に感謝する」と応じた。
マムダニ氏は現在、ニューヨーク市長選の世論調査で圧倒的なリードを保っている。『NYT』とシエナ大学が9日に発表した調査では、マムダニ氏の支持率は46%に達し、無所属で出馬したアンドリュー・クオモ前州知事の24%を大きく引き離した。クオモ氏はかつて3期務めた「政界の巨人」だったが、2021年にセクハラ疑惑で辞任。民主党予備選でマムダニ氏に敗れ、無所属で立候補した。共和党候補カーティス・スリワ氏は15%、無所属の現職エリック・アダムス市長は9%にとどまった。
インド系ムスリムのマムダニ氏は1991年、ウガンダで生まれた。南アフリカ共和国で暮らした後、7歳で米国に渡りニューヨークに定住。父はコロンビア大学教授、母は著名映画監督という裕福な家庭に育った。ブロンクス科学高校を経てボウディン大学でアフリカ研究を専攻。政治入りする前は住宅相談員やヒップホップ音楽家として活動し、2020年にニューヨーク州議会下院議員に初当選した。
昨年に市長選出馬を表明したが、当初は無名に近く、今年2月時点の支持率はわずか1%。クオモ氏の出馬により「ダビデとゴリアテの戦い」と見られていた。しかし、家賃凍結や最低賃金倍増、富裕税導入、無償保育、市内バス無料化といった急進的な左派公約で注目を集め、6月の民主党予備選では56%を得票、44%のクオモ氏を破って候補に選出された。
しかし、党内では依然アウトサイダー的存在で、党内少数派である民主社会主義派に属し、エリザベス・ウォーレン上院議員やアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員、無所属のバーニー・サンダース上院議員ら一部の支持にとどまる。最近では市長に当選すれば、国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ているロシアのプーチン大統領やイスラエルのネタニヤフ首相をニューヨーク市警で逮捕する、といった過激な公約を掲げている。
マムダニ氏の台頭を警戒するトランプ大統領は、SNS「トゥルース・ソーシャル」で「ホウクル知事が『小さな(Liddle)共産主義者』マムダニを支持した。衝撃的な出来事で、ニューヨーク市にとって非常に悪いことだ」と非難した。「Liddle」はトランプ氏が相手を侮蔑する際に使う「Little」の南部訛りである。さらに「悪い場所に良い金を送る理由はない」と述べ、ニューヨークへの連邦資金削減を示唆した。
マムダニ氏の急進的な姿勢に懸念の声も上がっている。民主党のトム・スオジ下院議員は『CBS』番組で「マムダニ氏や民主社会主義者は独自の党をつくるべきだ」と発言。『ウォール・ストリート・ジャーナル』は同日掲載のコラムで「マムダニ氏の社会主義実験が失敗すれば、ニューヨークは衰退しかねない」と警鐘を鳴らした。一方で、民主党内で存在感を高めているマムダニ氏が将来「第2のバラク・オバマ」になる可能性はない。南ア出身のイーロン・マスクCEOと同様、ウガンダ生まれのマムダニ氏には米大統領選への出馬資格がないからだ。
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