
ウクライナとロシアが相次ぎ民間人居住地を標的にした空爆を行い、戦争の惨禍が一層深刻化している。
ドイツ通信社(dpa)やロイター通信によると、ウクライナ軍は9月28日、ロシア西部ベルゴロド市を攻撃し、同市一帯で大規模停電が発生した。数千戸が停電し、住民の一部はエレベーターに閉じ込められるなど混乱が広がった。ロシアでこうした規模の停電が起きたのは、2022年2月の戦争開始以来初めてとされる。
ベルゴロド州当局は、熱電併給発電所がミサイル攻撃を受けたことが原因と説明した。SNS上には施設で爆発と煙が上がる映像が投稿された。ヴャチェスラフ・グラトコフ州知事は「停電は深刻だ」と述べ、空襲警報が継続中であることから住民に地下避難を呼びかけた。ベルゴロド市はウクライナ国境から約40キロに位置し、人口は約30万人である。
これに先立ちロシア軍は同日夜からウクライナ首都キーウなどにドローン・ミサイル計600発余りを発射した。ウクライナ軍によれば、このうちドローン568機とミサイル43発を迎撃したという。ゼレンスキー大統領は空襲が12時間以上続き、死者4人、負傷者80人が確認されたと明らかにした。ロイター通信は今回の空襲が戦争開始以降最長クラスだと伝えている。
NATO加盟国ポーランドは自国領内の被害を警戒し、戦闘機を緊急発進させるなど非常態勢を強化した。ロシア国防省は「ウクライナの長距離防空兵器や飛行場などドローン関連施設への大規模攻撃だった」と主張し、民間施設を標的にしているとの疑惑は改めて否定した。
ロシアの度重なる空襲で民間人被害が拡大するなか、米政府内では対ロ姿勢が硬化しつつある。トランプ米大統領はこれまでの親ロシア的姿勢から転換し、ウクライナの勝利や領土回復の可能性に言及する発言を行った。J.D.ヴァンス副大統領は米FOXニュースのインタビューで、長距離精密攻撃が可能な巡航ミサイル「トマホーク」の供与について「最終決定はトランプ大統領が下す」と述べ、支援の可能性に言及した。
トマホークは射程約2,500キロで、米軍の数多くの空爆で精度と威力が実証されている。ゼレンスキー大統領は欧州が同ミサイルを購入しウクライナに供与する案を米国に提案している。ヴァンス副大統領は「欧州から多数の要請がある」と述べ、実現の可能性を示唆した。ロシア側は供与決定を「戦争拡大を誘発する挑発行為」として強く反発する構えである。
米国は戦争開始以来、ウクライナへの長距離ミサイル供与を拒否するか、供給しても射程を制限してきた。前政権(バイデン政権)は拡大懸念から慎重姿勢を崩さず、現政権(トランプ政権)は支援を「税金の無駄」として議論自体を退けてきた。今回の検討が政策転換につながるか注目される。
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