
米国の共和党と民主党のつなぎ予算案合意が最終的に不調に終わり、10月1日の午前0時(現地時間、日本時間10月1日の午後1時)に米政府の「シャットダウン(一時的な業務停止)」が確実視されている。今回のシャットダウンが現実のものとなれば、2018年12月のトランプ政権1期目時以来の7年ぶりになる。
米政府がシャットダウンに突入すると、連邦公務員75万人が強制的に無給休職状態に陥る。特に米国のドナルド・トランプ大統領が9月30日(現地時間)に「シャットダウンになれば解雇しなければならない。多くの人が解雇されるだろう」と述べたことから、大規模な失業事態も懸念される。
シャットダウンが長期化した場合、税金還付や消費者物価指数などの経済指標の発表も一斉に停止すると予想され、その影響は大きくなる見通しだ。2018年12月の過去最長となる35日間のシャットダウンの影響で110億ドル(約1兆6,256億円)の経済損失が発生し、翌年第1四半期の米国経済成長率は0.2%ポイント一時的に低下した。

9月30日(現地時間)、米国議会予算局(CBO)の推計によれば、シャットダウンが現実になった場合、約75万人の連邦公務員が無給休職に入る見通しだという。シャットダウンにより、予算が確保されていない機関は職員に給与を支払えなくなるため、公務員は無給休職になる。
また、国立公園の閉鎖、パスポートやビザの申請、税金関連サービスの遅延の可能性もある。農家向け補助金や中小企業への融資承認も遅れ、米航空宇宙局(NASA)や国立衛生研究所(NIH)など連邦機関の研究活動も中断する可能性がある。
シャットダウンは、財政支出に対する議会の厳格な統制を定めた米国の「不足金請求禁止条項(Antideficiency Act)」に基づくものだ。この法律は、議会の承認がなければ一部の例外を除き、大半の機関に予算を支給できないと定めている。
CBOは「休職中の職員の1日あたりの人件費総額は約4億ドル(約591億1,790万円)に達する」と述べた。ただし、休職の規模は各機関の対応により日々変動する可能性があると説明している。
ただし、国家安全保障や公共の安全、憲法上の機能を担う必須人員は業務を継続する。具体的には、軍人、連邦法執行官、航空管制官、運輸保安庁(TSA)職員、公立病院の職員などが該当する。
しかし、これらの職員の給与はシャットダウン解消後に遡及して支払われる可能性がある。連邦航空局(FAA)は、新規管制官の訓練と採用を中止し、運輸保安庁(TSA)の空港保安業務も縮小される可能性が高い。これにより、航空機の遅延やキャンセルが発生する懸念がある。さらに、米国内国歳入庁(IRS)の税金還付、電話相談、書類処理などの核心業務も中断される。国立公園やスミソニアン博物館は、一部を除き開館が継続される見込みだ。

特に労働省労働統計局(BLS)がシャットダウン期間中に運営停止となれば、米消費者物価指数(CPI)など、月間雇用報告書を含む主要経済指標の発表が遅れる可能性がある。実際、2013年のシャットダウン時には、9月の雇用報告書が10月22日まで遅れ、その月のCPIも2週間後の22日に発表された経緯がある。
これにより、今月3日に発表予定だった非農業部門雇用統計や、15日に発表予定だったCPI、毎週木曜日に発表される新規失業保険申請件数などが、予定通りに公表されない可能性が高まっている。
米連邦準備制度理事会(FRB)は、政策金利決定など金融政策判断の際にBLSのデータを活用しているため、CPI発表の遅延は大きな負担となる可能性がある。これにより、FRBが年内の政策金利引き下げ幅を拡大する可能性が高まるという期待が広がっている。
この日、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のFedウオッチによると、連邦資金金利先物市場は、12月までに政策金利が50bp引き下げられる確率を75.8%に織り込んでいるという。前営業日の終値時点は66.8%だった。
ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)のストラテジスト、エリアス・ハダッド氏は「長期のシャットダウンは成長に対する下方リスクを高め、FRBがより緩和的な姿勢を取る可能性を高める」と分析している。

一方、市場ではシャットダウンの影響がすでに表れている。ニューヨーク株式市場の3大指数は、この日、シャットダウンによる金利引き下げ期待から3営業日連続で上昇して取引を終えた。投資家らは、シャットダウンに伴う景気懸念をFRBによる政策金利引き下げの要因として捉えている。
9月30日(米東部時間)、ニューヨーク証券取引所(NYSE)での取引終了間際、ダウ工業株30種平均は前日比81.82ポイント(0.18%)上昇し4万6,397.89で取引を終え、過去最高値を更新した。S&P500指数は前日比27.25ポイント(0.41%)上昇し6,688.46、ナスダック総合指数は68.86ポイント(0.31%)上昇し2万2,660.01で取引を終えた。
不確実性の高まりにより、安全資産とされる債券への資金が流入し、米国債利回りは一度下落した後、再び上昇に転じた。これは、投資家の間でシャットダウンの長期化に伴う信用格付け引き下げ懸念が高まり、米国債市場からの資金流出が起きたためと分析されている。
世界の債券利回りのベンチマークである10年物国債利回りは前営業日比1bp(1bp=0.01%ポイント)上昇し4.15%、金融政策に敏感な2年物国債利回りは前日比1bp低下し3.61%で推移している。上昇を続けていた金の現物価格も史上初めて1オンスあたり3,800ドル(約56万1,374円)を突破した。
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