
3年7か月に及ぶウクライナ戦争が欧州防衛産業界の勢力図を塗り替えている。「ドローン(無人機)戦争」とも言えるほど、ドローンと人工知能(AI)が戦場の主役になり、防衛系スタートアップが急成長した結果である。
最大の変化は武器開発が政府主導から企業主導へと移行している点だ。これまで政府が必要な武器を生産する企業を選定し予算を配分する方式から、企業が民間投資を受けて独自に開発した武器を政府に売り込む形へと変わっている。
米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は先月30日(現地時間)、ウクライナ戦争が欧州の軍備拡張に新たなビジネスモデルをもたらし、防衛スタートアップと投資家の流れを変えたと報じた。代表例はドイツ・ミュンヘン拠点の「ヘルシング(Helsing)」である。ウクライナにAIドローンを大量供給するこの企業は、最近、最先端のAIとステルス機能を搭載した新型ドローン「CA-1・エウロパ」を公開し、話題を呼んでいる。
ヘルシングは2021年設立時、ベンチャーキャピタル「プリマ・マテリア」から初期資金を調達してAIドローンを開発した。現在の企業価値は120億ユーロ(約2兆718億円)に達し、欧州で注目を集めるスタートアップの一つになっている。6月にはドイツの航空機メーカー「グロプ・エアクラフト」を買収し、AI基盤の電子戦・偵察システム、無人潜水艦・攻撃ドローンまで手がけ、事業を拡大中である。
NYTはヘルシングのほか、自律型無人潜水艇の開発に乗り出したドイツ・ブレーメン拠点の「ユーロアトラス(Euroatlas)」や、ドローン迎撃機の開発を進める英国のスタートアップ、「ケンブリッジ・エアロスペース(Cambridge Aerospace)」も注目すべき企業として紹介している。

NYTによれば、2021年から2024年までの欧州防衛スタートアップへの投資規模は、直前の3年間と比べて5倍に拡大したという。スペースXやパランティアといった米企業に後れを取ったものの、急速な成長を見せている。2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、欧州諸国が大幅な軍備増強を進め、投資家が防衛産業に注目した結果である。
当然のごとく、政府予算を背景に進められる武器開発と比べてリスクは存在する。しかし専門家は、AI基盤の自律型武器がこうしたリスクを低減させるほど魅力的であると指摘する。まず、大量生産が可能で生産コストも低廉である。無人システムであるため、人命保護用の安全装置も不要で、ソフトウェアが継続的に更新され、各種武器システムとの互換性も確保できる。5月、ヘルシングはバルト海上空で、AI戦闘機パイロット役を担う戦闘システム「ケンタウルス(Centaur)」をスウェーデンの「グリペンE」戦闘機に接続し、試験飛行を実施した例がある。
戦場でのコスト効率も非常に高い。合板とスチロールで作られたドローンは数百ドル程度だが、数百万ドル相当の戦車を一瞬で破壊できる。現在、ウクライナで破壊される標的の80%がドローンによるものである。元CIA職員のエリック・スレシンジャー氏はNYTに対し「数百万ドルの資金があれば、小型技術を開発できる」と語った。生産期間も短く、投資回収も比較的容易である。
一方、米軍の主力戦闘機「F-35」の場合は、「1995年開発開始→2001年ロッキード・マーチン社選定→2006年生産」という長い開発工程を経ており、1機あたりの価格は8,000万ドル(約117億7,717万円)に達する。しかし、民間投資家の第一の目的は安全保障上の利益ではなく収益であるため、国家安全保障戦略との衝突の可能性、軍産複合体の肥大化、軍事技術の悪用の可能性が懸念されるとNYTは指摘している。
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