
人口が100万人に満たない南太平洋の島国フィジーで、過去10年間にヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者が1,000%を超えて増加し、医療体制に緊急事態が発生した。感染者の多くが未成年で、麻薬を注入した注射器の再使用により感染者の血液が共有されたことが原因とされている。
6日(現地時間)、英BBCなどによると、昨年フィジーではHIV感染者が1,583人発生し、これは過去5年間の平均と比べて13倍増加した数字だという。2014年には500人に満たなかったHIV患者は、昨年5,900人に急増した。フィジー保健省は、今年末までに3,000件以上のHIV新規感染事例が発生する可能性があるとして、1月に「国家的危機」だと警告した。
HIVは後天性免疫不全症候群(AIDS)を引き起こすウイルスである。HIVに感染すると、免疫細胞であるCD4陽性Tリンパ球が破壊され、免疫力が低下し、様々な感染症や腫瘍の発生により死亡に至ることがある。感染者との性行為や注射器の再使用、感染者の血液を用いた輸血などを通じて感染が広がる。
専門家は、フィジーでHIV感染が急増している理由として、麻薬を注射で投与する際に感染者の血液を抜いて他の人に注入する行為を指摘している。これは「bluetoothing」または「hotspotting」と呼ばれる行為で、静脈注射で麻薬を投与した後、血液を抜いて他の人に注入し、複数の人が1本の注射器を介して血液を共有するものだ。

1本の注射器で複数の人が麻薬を投与できるため、コストが安く便利だという理由で広がっていると専門家は説明している。世界でHIV感染率が最も高い南アフリカ共和国やレソトでも、このような行為を通じて感染が拡大していることが知られている。フィジーの場合、全感染事例の48%がこのような注射器の再使用によるものだと把握されている。
特にフィジーは、過去10年間でアンフェタミン系麻薬の一種である「クリスタル・メス」の密売拠点となり、注射でクリスタル・メスを投与しようとする10代から20代が増加しており、HIVの地域社会での拡散スピードが加速している。
その他にも性行為を通じて感染する事例が多く、HIVに感染した女性が出産した赤ちゃんにおける「母子感染」の事例も増加している。最年少の感染者は10歳の子どもとされている。
専門家は、HIV感染に対する危機意識の高まりと、積極的に検査を受ける人の増加もHIV感染事例の増加の背景にあると説明している。それでもなおHIV感染に対する認識が不足しているか、スティグマ(偏見・差別)を恐れて検査を受けない人が少なくないため、現在の感染者数は「氷山の一角」である可能性があるとBBCは伝えている。
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