
台湾当局は、中国が台湾周辺での軍事活動を拡大し、奇襲攻撃の準備を進めていると警告した。9日(現地時間)、台湾国防部は定例国防報告書を通じ、中国がサイバー戦や世論戦などの「ハイブリッド戦争」手段を総動員し、台湾社会の信頼と結束を揺るがそうとしていることを明らかにした。
ロイター通信は同日、この報告書を引用し、中国がグレーゾーン戦術、共同戦闘態勢パトロール、標的型軍事訓練、および認知戦を組み合わせ、台湾に包括的な脅威を及ぼしていると報じた。認知戦とは、心理戦および世論操作を通じて相手社会の認識と判断を攪乱する戦略であり、中国はこれをサイバー空間と情報戦において積極的に活用している。報告書は、中国軍が訓練を実戦化し、台湾および国際社会に対して奇襲を仕掛ける可能性があると警告している。
台湾の中央通訊社(CNA)は、中国軍が電子戦能力と封鎖戦略を強化し、台湾に対する圧力を高めていると伝えた。自由時報や聯合報など現地メディアは、今回の報告書が約7万8,000字に及び、建国以来18回目の発行で、戦略環境、堅実な国防、平和の基盤、国防管理の4分野8章で構成されていると説明している。
報告書は、先端技術の導入を最重要対策として提示している。国防部は、その傘下の専門組織として「国防創新小組(DIO)」を新設し、人工知能(AI)、拡張現実(AR)、衛星画像の自動識別など民間の先端技術を国防システムに積極的に取り入れると表明した。また、「機動的かつ柔軟な軍隊を創り、国家を揺るぎなく守る」という方針を強調した。
現地メディアは、本報告書が軍事的対応のみならず、サイバーセキュリティおよびレジリエンスの強化も包括的に含んでいると高く評価している。レジリエンスとは、外部からの脅威や衝撃が発生した際に、社会全体が迅速に機能を維持し、復旧する能力を指す。
日本のシンクタンク、笹川平和財団(SPF)は、前日発表の別報告書において、中国がTikTokなどのソーシャル・メディアプラットフォームを活用し、特定の政治的発言や社会問題を増幅させることで、認知戦および世論操作を体系的に行っていると指摘した。SPFは、こうした手法が台湾社会の政治的二極化を深め、政府への信頼を低下させるために利用されていると分析している。
台湾国防部は、2030年までに国内総生産(GDP)の5%を国防費に充て、軍の現代化および非対称戦力の強化を継続する計画だ。今回の報告書は、10日に予定されている台湾の頼清徳総統の国慶節記念演説の前日に公開された。中国は昨年も、同様の行事直後に大規模な軍事演習を実施し、警告のメッセージを発信している。
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