ルッテNATO事務総長「地中海に残る最後の潜水艦、もはやロシア海軍の存在感なし」
オランダ政府「燃料漏れで浮上後、北海で曳航中」

マルク・ルッテ北大西洋条約機構(NATO)事務総長は10月13日、燃料漏れにより水面に浮上し北海で曳航中のロシアのディーゼル潜水艦について、「足を引きずっているような状態だ」と皮肉を交え、「最寄りの修理工を探し回っているようだ」と揶揄した。
NATOは今月9日、フランス海軍の駆逐艦が、英仏海峡の入口にあたるフランス西部ブルターニュ沖で水面に浮上したロシア潜水艦を追跡していると発表していた。
後にこの潜水艦は、黒海艦隊所属のディーゼル推進攻撃型潜水艦「ノヴォロシースク」と確認された。2014年に就役した全長約70メートルの艦で、カリブル巡航ミサイルを搭載でき、乗員は約50人にのぼる。
オランダ政府によれば、同艦は先月ジブラルタル海峡付近で燃料漏れを起こし、以降は北海で曳航されている。イギリス海軍は10月7日から9日にかけて潜水艦と曳航船を監視し、その後オランダ海軍が北海で追跡を続けたという。
ルッテ事務総長はスロベニアで行われたNATO関連行事で、「いまや地中海でのロシア海軍の存在感はほとんど失われた。故障した潜水艦が一隻、孤独に任務を終えて足を引きずりながら帰路についているだけだ」と述べた上で、「1984年のトム・クランシーの小説『レッド・オクトーバーを追え』の時代とは違う。いまは最寄りの修理工を探してさまよう潜水艦だ」と語った。
1990年に映画化された同作は、冷戦期にソ連の最新鋭原子力潜水艦「レッド・オクトーバー」の艦長と乗員が米国への亡命を試み、米ソ両国の緊張が高まる中で追跡戦を繰り広げる物語として知られる。

軍事専門のテレグラムチャンネル「VChK-OGPU」は先月27日、「潜水艦内部に燃料が漏れ、爆発の危険が生じたため、やむを得ず浮上した」と主張した。一方、ロシア黒海艦隊はこれを否定し、「地中海での作戦を終えて帰還中、国際航行規則に基づき英仏海峡で浮上しただけだ」と反論している。
専門家によれば、ロシア潜水艦が英仏海峡を通過する際に「無害通航」の規定に従い浮上するのは一般的な手続きだという。今回の潜水艦は、地中海での情報収集や装備輸送などを行っていた可能性もあるとみられる。
しかし、黒海艦隊全体ではすでにウクライナの無人艇やミサイル攻撃により約4割が損失したとされ、旗艦「モスクワ」が撃沈されるなど24隻以上が破壊された。艦隊は大きく後退を余儀なくされている。
さらに、ロシア唯一の航空母艦「アドミラル・クズネツォフ」も2017年からムルマンスク港に係留されたままで、資金難により修理が何度も延期されている。ロシア紙『イズベスチヤ』は7月、「追加資金の投入か廃艦手続きかを決定するまで修復作業が中断された」と報じた。
2017年、当時の英国防相マイケル・ファロン氏は、同艦が英仏海峡を通過する際に黒煙を噴き上げたとして「ロシアの恥ずべき艦」と揶揄したこともある。修理費用は約600億ルーブル(約1,060億円)に上るとされるが、横領疑惑の浮上で改修スケジュールはたびたび遅延している。
ロシア軍内部では、「従来型の空母はもはや時代遅れであり、将来は無人機とロボットの時代だ」とする見解と、「遠海で作戦を展開するには航空支援が不可欠」とする意見が対立している。
仮にクズネツォフが廃艦となれば、ロシアは国連安全保障理事会の常任理事国の中で唯一、空母を保有しない国となる。
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