米金融界、再び「信頼危機」 信用詐欺疑惑で地方銀行に「パニック」
Zions Bancorpの詐欺容疑公表を受け銀行株が暴落 投資家の不安拡大
大手投資ファンドを巻き込んだ詐欺疑惑が拡散 中小銀行の業績見通しにも暗雲
破産・詐欺・訴訟が引き金となった信用不安 投資家の大規模な売り圧力に発展

米国の地域銀行に対する市場の信頼が再び揺らいでいる。16日(現地時間)、Zions Bancorp(ザイオンズ)が巨額の信用損失と詐欺容疑を公表し、銀行株全体が急落した。自動車関連企業の破産余波が冷めやらぬ中で、信用リスクへの懸念が再燃している。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、ザイオンズは声明で「複数の投資ファンド関連の融資において大きな損失が発生し、借り手が業界内の複数の金融機関を巻き込む構造を利用して詐欺を行った」と明らかにした。
この発表を受けて同社株は13.14%急落し、2023年の関税ショック以来最悪の下落率を記録た。Western Alliance Bancorpも10.81%下落し、地域銀行株指数は6.3%、KBWナスダック銀行指数は3.6%それぞれ下落した。
◆「融資詐欺」疑惑 ザイオンズ、6,000万ドル(約90億円)回収訴訟を提起
ザイオンズはソルトレイクシティ本社での緊急記者会見で、投資ファンド「Cantor II」、「Cantor IV」に対する約6,000万ドル(約90億円)の融資回収を求めて訴訟を起こしたと発表した。同行は、これらのファンドが回転信用枠を利用し、不良商業用不動産ローンを大量に買い取っていたと主張している。
訴訟には、同グループ経営陣が率いる「Cantor Group V」も含まれており、ザイオンズはこの企業からも約1億ドル(約153億円)の回収を目指す。
一方、カンター・ファンド側の弁護士ブランドン・トラン氏は「依頼人は一切の違法行為を否定する。主張は根拠がなく事実を歪曲している」と反論した。
◆相次ぐ破綻で市場心理悪化 「ドミノ不安」広がる
今回の詐欺疑惑は、First Brands GroupやTricolor Auto Groupの破産後に浮上した。ウォール街では、地域銀行への信頼低下が金融市場全体の「ドミノ不安」につながる可能性を警戒している。
投資家はこの日、大手銀行よりも中小銀行株を中心に売りを強めた。特に収益基盤が脆弱な地域銀行が大きな打撃を受け、ジェフリーズ・フィナンシャル・グループの株価は、WSJが同社とFirst Brandsの関係を報じた直後に10%超下落した。
◆ 「システミックリスクではない」も、警戒感は根強く
エバーコアのアナリスト、ジョン・パンカリ氏は「ザイオンズの融資案件は破綻企業とは直接関係がないが、借り手リスクの顕在化を示した」と分析した。
JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOも「ゴキブリが1匹いれば、必ず他にもいる」と述べ、信用不良が単発で終わらない可能性に警鐘を鳴らした。
一方で、大手銀行の経営陣は第3四半期決算発表で「消費者の支出と融資活動は健全に推移している」と強調し、U.S. BancorpのCFOジョン・スターン氏は「現時点では悪化の兆しはない」と述べ、KeyCorpのクリス・ゴーマンCEOも「数件の不良は想定内であり、信用危機に発展する状況ではない」とコメントした。
◆信頼回復が焦点 市場は神経質に反応
銀行株は2023年の危機後、規制緩和や取引正常化への期待で徐々に回復してきたが、今回の事件はその基盤が脆弱であることを浮き彫りにした。
ウェルズ・ファーゴのアナリスト、ティムール・ブラジラー氏は「投資家の信頼を揺るがす事件が起きるたびに市場は過剰反応する。投資心理こそが市場を動かす」と指摘した。
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