「今後はさらに過激に」――成人向けコンテンツを一層開放するこの企業
OpenAIとGrok、成人向け分野を拡大
オルトマンCEO「我々は道徳警察ではない」
ChatGPT、より刺激的な方向へ方針転換
有料化を進め収益最大化を狙う

米国の主要AIサービスが相次いで成人認証を前提とした一部コンテンツの制限を緩和する一方で、ゲーム業界では「過度な表現」を含む作品の削除が続き、ダブルスタンダード(表現の二重基準)をめぐる議論が高まっている。
最近ではxAIの「Grok」に続き、OpenAIの「ChatGPT」までが大人向けの会話機能を含むコンテンツ提供に踏み切る方針を示した。これに対し、Steamなどの主要ゲームプラットフォームでは成人向けゲームが次々と削除されており、業界内では「同じような表現でも、AIとゲームで扱いが異なるのは不公平だ」との声が上がっている。
一方で、過激な内容の拡散を防ぐために一定の指針が必要だとする意見も少なくない。
情報通信業界によると、OpenAIは12月からChatGPTで成人認証を受けた利用者により幅広い話題を扱うコンテンツを提供する予定だという。サム・オルトマンCEOは「成人利用者を大人として扱う」とし、「年齢が確認された利用者には、より自由な対話を許可する」と述べた。
具体的にどの程度の表現が許容されるのかは明らかにされていないが、業界ではこの動きを「Grok」への対抗策とみて注目している。
2023年に登場したGrokは「率直に答えるAI」を掲げ、今年7月から恋愛・パーソナル分野の会話機能を拡大した。特に有料ユーザー向けAIコンパニオン「アニ(Ani)」が象徴的な存在であり、利用者の設定に応じて親密な会話を模した応答が可能になっている。画像や動画の生成でも、他サービスに比べ表現の自由度が高いとされる。
Character.AIなど他のプラットフォームでも、利用者が仮想キャラクターとのロマンチックな交流を楽しむ機能が広がっている。
こうしたAI業界での表現緩和の流れとは対照的に、ゲーム業界では規制強化が進む。
今年7月、世界最大のPCゲーム配信プラットフォーム「Steam」は新たなガイドラインを導入し、成人向け要素を含む一部タイトルに対して規制項目を追加。その結果、数百本規模の作品が削除されたとみられる。Steamは世界のPCゲーム市場の約8割を占める巨大プラットフォームであり、この退場は「事実上の販売停止」とも言われる。
同様の動きはインディーゲーム専門サイト「itch.io」でも見られ、販売停止が相次いでいる。
背景には決済会社の審査基準が影響しているとされる。Steamの新ガイドラインには「決済処理業者のルールに抵触する可能性のある内容」が削除対象として明記されている。
かつてマスターカードやビザなどの国際カード会社が、大手動画共有サイトへの決済サービスを停止した例があり、業界では「同様の圧力がゲーム市場にも及んでいる」と分析されている。
こうした「私的検閲」への反発も強い。Steamでの削除後、国際ゲーム開発者協会(IGDA)は声明を発表し、「合意のもとで制作された一般的な成人向け作品や恋愛物語まで規制されかねない」と指摘。「禁止対象と合法的な表現を区別する明確な基準を示すべきだ」と訴えた。
一方で、AI企業が収益拡大を目的に刺激的な方向へ傾くことへの懸念も根強い。表現の自由と倫理的責任の線引きを、社会全体で改めて問う時期に来ている。
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