
ドナルド・トランプ米政権は、世界最大の不妊治療薬メーカーの一つであるEMDセローノ社と、体外受精(IVF)費用の大幅引き下げに関する合意を締結した。
フィナンシャル・タイムズは16日(現地時間)、トランプ大統領が、標準的なIVFサイクル当たりの薬剤価格を73%引き下げると発表したと報じた。
ドイツの製薬大手メルク(Merck)グループの子会社であるEMDセローノは、この合意により米国の関税適用を免除される代わりに、来年にサービス開始予定のトランプ大統領主導のオンライン医薬品価格比較プラットフォーム「TrumpRx」を通じて自社のIVF治療薬を低価格で販売する予定だ。
ホワイトハウスは、この措置により、米国内の不妊治療患者がIVF1サイクル当たり平均2,200ドル(約33万円)を節約できると見込む。一般的に1回のIVF治療費が5,000ドル(約75万円)を超えることを考えると、ほぼ半額になる計算だ。
今回の契約により、EMDセローノは自社の排卵誘発剤「PERGOVERIS(ペルゴベリス)」の米食品医薬品局(FDA)承認手続きも迅速に進められるようになった。EMDは以前、トランプ大統領から価格引き下げを要求された17社の製薬会社の一つだった。
米国生殖医学会(ASRM)によると、2023年に米国で生まれた新生児の約2.6%がIVFによる出生だった。英国では同年、新生児32人に1人がIVFによる出生だったと英国の受精・胚研究認可庁(HFEA)が報告している。
ただし、IVFの拡大はトランプ大統領に政治的な重荷となる可能性もある。保守強硬派や一部の反中絶派が、受精卵の廃棄を伴うIVF手順に倫理的な反対を唱えているためだ。
実際、2024年にアラバマ州最高裁は、胎児は発達段階や位置に関係なく「子供」であるとして、IVF治療を中止させる判決を下している。一方で、トランプ大統領と共和党指導部は同判決と距離を置き、IVFを「生命創造の一環」として保護すべきだとの立場を示した。
トランプ大統領は同日、反中絶団体とIVF支持者の対立に関する質問に対し、「これ以上に生命を尊重する行為はない」と答えた。
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