米国、原子力企業に武器級プルトニウムを解放…オクロら申請へ
サム・アルトマンCEO支援のオクロ・ニュクレオなど、AI時代の「核燃料競争」参入
冷戦時代の核兵器由来廃棄物、 安全リスクへの懸念も

米政府は、冷戦時代の核兵器から発生した核廃棄物を高性能原子炉の燃料に転用できるよう、エネルギー企業にアクセス権を付与すると発表した。AIの急速な発展で電力需要が増加するなか、ロシアが支配するウラン供給網への依存を減らす狙いがある。
21日(現地時間)の英フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、米エネルギー省は公式文書で、核関連企業が最大19メガトンに相当する政府保有の武器級プルトニウムの提供を申請できると明らかにした。
選定企業は、原子力規制委員会(NRC)の運転許可を迅速に取得できる見通しだという。FTは、小型モジュール炉(SMR)開発を手がける米オクロや仏ニュクレオが申請に名乗りを上げる可能性が高いと報じた。オクロは、OpenAIのサム・アルトマンCEOが出資・支援している企業でもある。
この措置は、数十年ぶりに電力需要が増加傾向に転じるなかで、トランプ政権が原子力産業の再活性化を図る一環とみられる。BloombergNEFによると、AIモデルの学習や運用を支えるデータセンターの急増で、2035年までに世界の電力需要は2倍以上に膨らむ見通しだ。
米国ではミシガン州とペンシルベニア州の大規模原発が今後2年以内に再稼働する予定で、SMR開発にも数十億ドル規模の投資が進む。ただ、燃料の供給不足が依然として成長の最大の制約要因となっている。
SMRは最大300メガワットの電力供給が可能で、通常は高濃度の低濃縮ウラン燃料を必要とするが、その生産はロシアが実質的に支配している。米国の年間ウラン生産量は1トンに満たず、バイデン前大統領は昨年、ロシア産ウラン製品の輸入を禁止した。
トランプ大統領は5月、原子力産業の振興を目的に4件の大統領令を発令した。このうち2件は、エネルギー省に余剰燃料を原子炉開発企業に提供するよう指示する内容だった。
一方で、専門家からはプルトニウムの商業利用や、管理不備による流出リスクを懸念する声も上がっている。
憂慮する科学者連合のエドウィン・ライマン氏は「核兵器と同等の厳重な管理が行われない場合、盗難の恐れが高まる」と警告し、「政府が適切な基準を維持できるかが鍵だが、現実的には難しいだろう」と述べた。
また、FTはトランプ大統領がプルトニウムを分配する法的権限を持つかどうかも不透明だと指摘した。米国では核廃棄物管理の権限が議会に属している。
一方、ニュクレオは先週、オクロとの共同プロジェクトの一環として最大20億ドル(約3,000億円)を米国に投資する方針を発表し、この資金は先端燃料の製造や生産インフラの整備に充てられる予定だ。
同社のステファノ・ブオーノCEOは「プルトニウムを利用できるようになり非常に喜ばしい。米国が保有する9万2,000トンの使用済み核燃料だけで、100年間はエネルギー自立が可能だ」と述べた。
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