米国で政治的忠誠を優先した研究予算削減と人員解雇
専門性軽視で米科学界に危機…中国系研究者の帰国ラッシュ

米国の学術界で、政治的圧力による人員削減や研究環境の不安定化が進む中、中国系米国人研究者の間で「1960年代の中国・文化大革命に似ている」との見方が広がっている。
22日付の香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)は、「トランプ政権による政治的粛清、研究予算の削減、専門性を軽視する風潮が米国の研究界を混乱に陥れている」と報じ「一部の中国系学者は、これを中国現代史の暗黒期である文化大革命になぞらえている」と伝えた。
文化大革命は、毛沢東の主導で1966年に始まり約10年続いた中国の大規模な政治運動で、数多くの犠牲者を出したほか、知識人社会の崩壊や経済的損失、文化財の破壊など深刻な爪痕を残した。特に中国の科学界は壊滅的な打撃を受け、若手研究者の育成が途絶えたことで、中国の科学研究は数十年遅れることとなった。
SCMPの取材に応じた中国系アメリカ人の数学者でフィールズ賞受賞者のシン・トゥン・ヤウ教授は「米国の学界は実質的に中国の文化大革命と同じような混乱を経験している」と語った。他の中国系研究者たちも同様の見解を示しているという。
匿名を希望した米中西部の中国系生物学者は「トランプ政権下の『チャイナ・イニシアチブ』で長年にわたり疑念の目を向けられ、コロナ禍では嫌がらせも受けた」と述べた。さらに「最近は承認済みの研究提案が、新技術に関する用語の問題を理由に撤回されることもあった」と明かし「来年には中国への帰国を検討している」と語った。
ホワイトハウスは今年初め、主要科学機関の予算を削減し、最近では疾病対策センター(CDC)で約4,000人、米航空宇宙局(NASA)で数百人の職員を解雇した。また、中国系研究者や留学生へのビザ制限措置も相次いでいる。

米国内の学界が政治的要因による構造改革と研究環境の不安定さで深刻な混乱に陥っている中、一部の中国系米国人科学者たちは、これを文化大革命期に中国科学院の研究所が100以上から10未満に減らされた事例を想起させると指摘する。
中国出身の研究者で批評家の方是民氏はSNS上で「新たなトランプ時代の文化大革命は、専門性より政治的忠誠を優先している」と批判した。
デニス・サイモン・デューク大学教授も「政治的忠誠が専門性より重視される空気が広がっている」と指摘し「これは知識人を信頼するなというメッセージに等しく、米国自らが科学の発展を妨げている」と警鐘を鳴らした。
ただし「米国はまだ文化大革命期のような極端な暴力の段階には達しておらず、教授が街頭で吊し上げられたり自殺に追い込まれるような事例はない」と述べたうえで「しかし中国が前進する一方で、米国は後退している」と問題の深刻さを強調した。
専門家らは、こうした傾向が続けば米国の科学界は人材流出と研究基盤の弱体化という構造的危機に直面しかねないと警告している。














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