
東京のオフィス賃料が急騰している。日本の主要企業が人材確保競争を強化する中で、立地や設備の優れた都心の大型ビルへの移転需要が急増しているためだ。
『日本経済新聞』が実施した2025年下半期のオフィス賃料調査によると、東京の賃料指数は前年に比べ10%(14.82ポイント)上昇し、168.89を記録した。1年で2桁の上昇率となるのは、2008年の『不動産ミニバブル』以来、初めてとなる。
今回の調査は、オフィス仲介大手4社のデータを基に、基準時点(1985年2月=100)との上昇幅を指数化したもので、主に既存ビル(竣工1年以上)の賃料を対象としており、市場全体の需給動向を最もよく反映している。
賃料の上昇率は最近の消費者物価指数(CPI)の2~3%を大きく上回り、『リーマン・ショック』直前の水準を超え、賃料水準自体も17年半ぶりの最高値を更新した。
賃料急騰の背景には人材確保競争がある。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で縮小していた企業活動が正常化する中、人口減少による構造的な人手不足が顕著になっており、企業は賃金の引き上げだけでなく、「働きやすいオフィス」の提供を通じて人材獲得の強化に乗り出している。
ザイマックス不動産総合研究所の中山善夫所長は「社員1人当たりのオフィス賃料負担は人件費の10分の1程度」と指摘。「賃料を『人的資本への投資』と捉える経営者が増えている」と説明した。
大企業のオフィス移転も活発化している。『Amazon Japan』は2023年に開業した東京・港区の『麻布台ヒルズ』に新オフィスを設置した。『本田技研工業』は2029年、東京駅前の「八重洲」開発地に本社機能を移転する計画だ。
『クラシエ』はJR高輪ゲートウェイ駅近くの新築ビル『THE LINKPILLAR 2』に2027年に本社を移転する。同社は「通勤の利便性を維持しながら、外部との連携を強化し、成長基盤を整える」と説明している。
東京の中心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)の空室率は9月時点で2.68%となり、市場の均衡ラインとされる5%を大きく下回った。2020年6月以来の最低水準となった。不動産仲介業界の関係者は「丸の内・大手町、八重洲・日本橋などの人気エリアでは空室が事実上枯渇しており、企業間の争奪戦が繰り広げられている」と語った。
新築ビル建設に必要な鋼材や生コンクリートの価格、工事人件費の上昇が続く中、既存ビルの維持・管理費も上昇している。加えて、建物所有者がコストを賃料に転嫁する動きもあり、賃料上昇圧力が高まっている。
東京の新築ビル(竣工1年未満)の賃料指数は202.53で、上半期に比べわずかに下落したものの、前年同期比では12%上昇した。
専門家は「都心のプライムオフィス需要は当面続く」と指摘。「人材確保やESG経営を重視する企業が増える中で、『良い立地』と『快適な勤務環境』が新たな競争力として定着している」と同紙は伝えている。















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