
米ニューヨークでの中国独立映画祭が、中国当局の圧力を受け参加者が次々と離脱し、最終的に中止に追い込まれた。映画祭中止の背景に中国当局の誘導と圧力があったことが明らかになり、中国当局を批判する声が高まっている。
11日、米紙『ニューヨーク・タイムズ(NYT)』や英紙『ガーディアン』によると、中国の独立系映画人チュー・ルークン氏は、ニューヨークで新たに発足する中国独立映画祭「インディ・チャイナ」の総監督として準備を進めていたが、中国にいる父親から電話を受けた。父親はチュー氏に「悪いことをしていないか」と問いかけ、中国に迷惑をかけるような行動を控えるよう求めたという。
その翌日以降、チュー氏は作品を上映予定だった監督や討論者、さらにはボランティアから相次いで「映画祭に参加できない」との連絡を受けた。ほとんどは個人的な事情を理由に挙げていたが、一部は中国警察から参加を控えるよう指示されたと明かした。チュー氏によると、中国当局の圧力を受けた参加者には、数年間海外に住んでいた中国人や外国籍者、中国系でない人も含まれていた。
チュー氏は中国独立映画界で知られる監督・製作者である。しかし、創設メンバーとして活動していた北京独立映画祭は当局の圧力により2014年に中止され、チュー氏は同年に米国へ移住し、ニューヨークで活動を続けてきた。
今年初め、チュー氏はニューヨークで中国独立映画祭を開催することを決意。自身の資金を投入し、世界中から約200本の作品を応募、うち31本を選定した。こうして準備された「第1回インディ・チャイナ」映画祭は、当初8日から15日までの開催を予定していた。
しかし5日、チュー氏はSNSを通じて、監督たちが次々に参加を撤回し、予定していた作品の約8割を上映できなくなったことを明らかにした。さらに開幕の2日前となる6日、映画祭の公式ホームページを通じ、イベント自体を中止すると発表した。
ホームページの文章でチュー氏は、「恐怖や屈服によってこの決定を下したわけではない。しかし映画祭の中止が、いくつかの不明な勢力によって関係者や私の友人・家族が苦しめられるのを防ぐことを願っている」と述べた。
チュー氏によると、上映予定だった作品の中には、COVID-19パンデミックや一人っ子政策など、中国政府が敏感に捉えるテーマを扱ったものもあったが、その他の映画は中国国内の主要上映館でも公開可能な作品だったという。チュー氏はNYTに対し、「ニューヨークでこれほど難航するとは思わなかった」と語った。
かつて中国では独立映画の制作が盛んに行われていた。しかし、2013年3月に習近平国家主席が権力を掌握して以降、イデオロギー的純粋性が強調され、検閲が強化された結果、独立映画が活動できる場のほとんどを失った。
中国共産党の慣例では、習近平主席は2023年に退任するはずだったが、現在も主席職に留まっている。
かつて中国で最も著名だった北京独立映画祭は、11回目となる2014年の開幕当日に中止されて以来、再び開催されていない。政府批判的な内容の映画を制作した監督たちは、懲役刑や罰金刑を言い渡される事例もあった。
中国当局が海外で開催される中国関連の文化・芸術イベントに圧力をかける事例は、最近も複数報告されている。
7月にはタイの美術館での展示において、中国の少数民族弾圧や香港関連の内容が中国政府の要請で削除・撤去された。今年初めにはフィリピン・マニラで開催された映画祭で、中国とフィリピンの南シナ海領有権争いを扱ったドキュメンタリーが上映されなかったが、主催者側は「外部要因によるもの」と説明した。
NYTは、ニューヨーク映画祭に対する「中国当局の明白な脅威は、中国政府が批判的な声を抑え込むためにどこまで踏み込むかを示している」と指摘している。















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