「麻薬との戦い」を掲げ、米国がカリブ海で戦力を増強
必要以上の軍事展開に「政権転覆」の意図を指摘する声
法の枠を超える軍事行動に英国は情報共有を停止

中南米・カリブ海で緊張が高まっている。米国が最新鋭空母を投入してベネズエラへの圧力を一段と強めたためだ。ドナルド・トランプ大統領による軍事路線は、日を追うごとに大胆さと危うさを増している。
東地中海から急派された空母打撃群
米海軍は11日(現地時間)、ジェラルド・R・フォード空母打撃群が米南方軍の作戦区域に入ったと発表した。南方軍はメキシコ以南の中南米地域と周辺海域、カリブ海を所管する。
同空母は、ピート・ヘグセス国防長官の急な指示で東地中海を離れ、およそ3週間でカリブ海に到達したとニューヨーク・タイムズは伝えた。ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、この派遣により欧州軍、さらには中東を担う中央軍の作戦区域にも空母は残っていないという。
名目上の目的は「麻薬との戦い」だ。ショーン・パーネル国防総省報道官は「今回の増強は、麻薬密輸の遮断や国際犯罪組織の抑止・解体に向けた既存能力を補強するものだ」と説明した。
トランプ大統領は以前から、米国に麻薬を運び込むベネズエラの麻薬カルテルをテロ組織に指定し、疑わしい船舶を撃沈する作戦を進めてきた。ロイターによると、9月以降のこうした攻撃は少なくとも19回に及び、死者は計76人に達する。
軍用機75機超の「巨大空母」投入 真の狙いは別に?
しかし、カリブ海にここまで戦力を集中させる理由は、麻薬対策だけではないとの見方が根強い。フォード打撃群の到着前から、同地域には軍艦8隻、原子力潜水艦、F-35戦闘機などが展開していた。
2017年に就役したフォード級空母は米海軍の最新鋭にして世界最大の空母だ。搭載航空機は75機を超え、その火力は麻薬取締りの範囲を明らかに逸脱している、とニューヨーク・タイムズは指摘する。
結局のところ、ニコラス・マドゥロ政権の打倒が真の狙いではないかとの分析が強まる。米メディアも、トランプ政権が左派政権であるマドゥロ政権の転覆を視野に、複数の軍事オプションを検討していると報じた。報道によれば、大統領警護部隊への直接攻撃や油田の掌握などが候補に挙がっている。

ベネズエラ側も抗戦姿勢を崩していない。ロイターによると、ベネズエラ軍は米軍との大きな戦力差を踏まえ、国内280か所以上に散開した小規模部隊がゲリラ戦で応じる作戦を準備しているという。老朽化したロシア製装備まで動員される見通しである。
ワシントン・ポストは、ベネズエラが2000年代に購入したスホーイ戦闘機の修理やレーダーの改修、ミサイルシステムの供給支援をロシアに依頼したと報じた。
「軍をおもちゃのように」 米国内外から批判高まる
トランプ大統領による軍の投入は、麻薬取締りにとどまらず、不法移民対策、国内の治安維持にまで広がっている。米海軍のジェームズ・スターク元少将は「トランプ大統領は軍をほとんど『おもちゃ』のように扱っている」と語った。
批判は国際的にも高まっている。特に麻薬運搬船への空爆については「超法規的殺害」との指摘が出ている。CNNによれば、英国政府はこの攻撃を国際法違反と判断し、1か月前から当該海域における麻薬密輸船の情報共有を米国と停止したという。















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