中東でF-35保有はイスラエルのみ 軍事バランスに打撃
米国が保証してきた「質的軍事優位」が崩れる可能性

ドナルド・トランプ米大統領は、サウジアラビアの実権者であるムハンマド・ビン・サルマーン皇太子との首脳会談を前に、最新鋭ステルス戦闘機「F-35」を同国に販売する意向を示した。中東地域でF-35を保有しているのはイスラエルのみであり、サウジが導入した場合、地域の軍事バランスが変化するとの見方も出ている。サウジが中国とも近い関係を維持していることから、最先端技術の流出を懸念する声もあるが、トランプ大統領はビン・サルマーン皇太子との関係改善を優先したとみられる。皇太子の訪米を機に、トランプ氏の家族企業がサウジ主導の高級リゾート開発に関与するとの報道もあり、利益相反をめぐる議論も広がっている。

トランプ大統領は17日(現地時間)、ホワイトハウスで開かれた「2026年国際サッカー連盟(FIFA)北中米ワールドカップ・タスクフォース(TF)」会合後、記者団の取材に応じ、「サウジにF-35を売却するのか」との質問に対し、「そのつもりだ」と述べた。トランプ氏は18日にホワイトハウスでビン・サルマーン皇太子と会談する予定で、F-35契約に関する具体的な協議が行われる見通しである。『ロイター通信』によれば、サウジは米国に対しF-35を48機供与するよう要請しているという。

サウジは米国製兵器の最大級の顧客であるものの、F-35については導入が認められていない。米国が「イスラエルの質的軍事優位(QME)」を維持する政策を採っているためである。このため、サウジのF-35導入が現実化すれば、イスラエルが米国に追加的な安全保障措置を求める可能性があると、米政治専門メディア『アクシオス(Axios)』は指摘している。また、サウジが中国との安全保障協力も続けていることから、米国が最先端兵器の輸出に慎重な姿勢を取ってきた側面もある。『ニューヨーク・タイムズ(NYT)』は、国防情報局(DIA)が「F-35をサウジに売却すれば中国への技術流出リスクがある」とする報告書をまとめたと伝えている。
米国とサウジは長年の戦略的パートナーだが、2018年のサウジ反政府記者ジャマル・カショギ氏殺害事件を機に関係が悪化した。こうしたなか、トランプ大統領は5月、2期目の初外遊先としてサウジを選ぶなど、関係修復に力を入れている。一方、サウジ側もトランプ氏に配慮を示しており、英紙『フィナンシャル・タイムズ(FT)』は、トランプ氏の家族企業「トランプ・グループ」が、サウジのパートナー企業であるダー・グローバル(Dar Global)と共に、モルディブで80棟規模の高級リゾート開発に参画する計画だと報じた。
また、トランプ大統領は同日の会議で、「FIFA優先予約システム(FIFA Pass)により、ワールドカップのチケット保有者でビザ面接の待機時間が長い場合、優先申請が可能になる」と説明した。ただ、マルコ・ルビオ米国務長官は「チケットを持っていても米国入国が保証されるわけではない。審査は全員同じ基準で行われる」と強調した。













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