エネルギー省「電気料金抑制のための措置」
1979年の炉心溶融事故から46年ぶり

ドナルド・トランプ米大統領は、米国史上最悪の原発事故の現場として知られるペンシルベニア州スリーマイル島原子力発電所について、46年ぶりの再稼働に向けた手続きを開始した。米エネルギー省はコンステレーション・エナジーに10億ドル(約1570億円)の連邦融資を行う方針で、1979年の事故以降止まっていた原発政策が急転換することになる。急増する電力需要に対応するため、長らく停止していた1号機を再稼働させる判断に踏み切った形である。
エネルギー省のクリス・ライト長官は声明で、「原発の再稼働は電力価格の抑制に寄与する。政権としても、より多くの原子炉を稼働状態に戻すため前例のない措置を講じている」と説明した。
また、「高騰する電力価格を抑えるには、信頼性の高い電源を一つでも多く電力網に組み込む必要がある。こうした取り組みは国内製造業の回帰(リショアリング)にもつながる」と述べた。
スリーマイル島原発では1979年に2号機で炉心溶融事故が発生し、同号機はそのまま永久閉鎖となった。1号機は運転コストの増大を理由に2019年に停止している。米国最大の原子力発電事業者であるコンステレーションは昨年末、同敷地で2027年に出力835メガワットの原子炉を再稼働させ、マイクロソフト(MS)のデータセンター向けに電力を供給する計画を明らかにした。出力規模としては約80万世帯分に相当する。
きっかけの一つは、AI事業の拡大で電力需要が急増するMSの要請だ。米国では1990年代以降、新たに稼働した大型原子炉は3基にとどまっていたが、再生可能エネルギーに批判的なトランプ大統領は今年、「原発ルネサンス」を宣言し、原子力産業の強化へ大きく舵を切った。大統領は5月、原子力発電容量を現在の約100ギガワットから2050年までに400ギガワットまで拡大する行政命令に署名しており、既存炉の再稼働や10基の大型原子炉建設を推進する方針である。
ただ、スリーマイル島1号機の再稼働には原子力規制委員会(NRC)の承認が不可欠で、手続きには時間を要する見通しである。
米国の原子力発電は近年、安価なシェールガス発電や再生可能エネルギーの台頭によって存在感が薄れていた。しかし2022年のロシアによるウクライナ侵攻後、欧州発のエネルギー危機を受けて原子力への評価が見直され、フランスや英国、日本など主要国でも原子力政策の再検討が進んでいる。















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