
ドナルド・トランプ大統領が先月予告したカナダへの追加関税の発動を、現時点では見送っている。マーク・カーニー首相による働きかけが影響したのではないかという見方が出ている。
米政治メディア『ポリティコ』は23日(現地時間)、トランプ大統領が先月、カナダとのすべての交渉を打ち切ったうえで10%の追加関税を課すと警告したものの、実際の発動は水面下で先送りされていると報じた。
カナダはトランプ政権第2期の発足以降、メキシコ、中国と並び、関税政策の主要ターゲットとされてきた。両国は難航する貿易交渉を続けていた中、先月カナダ側が放映した反関税広告をきっかけに、追加関税の危機に直面していた。
問題となった広告は、米大リーグ(MLB)ワールドシリーズ期間中にオンタリオ州で放送され、1987年のロナルド・レーガン大統領によるラジオ演説を編集したものである。内容は関税の経済的弊害を強調する構成だった。
関税を通商交渉や経済・安全保障分野の主要な圧力手段としてきたトランプ大統領は、この広告に強い不快感を示し、先月25日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に「カナダに10%の追加関税を課す」と投稿した。
しかし発言から約1か月が経過した現在も、トランプ政権は税関・国境取締局(CBP)に追加関税の実施を指示する公式文書を出しておらず、米輸入業者にも新たな関税に関する具体的な通知は届いていない。
ホワイトハウスも、ポリティコの取材に対し、追加関税を実際に発動するかどうかについて明確な回答を避けている。
ポリティコは米政府関係者の話として、「トランプ政権は追加関税を当面保留し、今後の交渉で交渉カードとして利用する構えだ」と伝えた。現在、米国がカナダに課している関税率は35%となっている。
こうした方針転換の背景には、カーニー首相の対応が影響したとの見方が強い。報道によると、カーニー首相は先月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせてトランプ大統領と個人的に接触したという。
フラビオ・ボルフ・カナダ自動車部品製造協会会長は「カーニー首相が広告問題についてトランプ大統領と直接話し合ったと聞いている。その場で一定の理解に至った可能性がある」と語った。
カーニー首相は、その広告について謝罪したことをすでに認めており、問題の広告は現在、放送が中止されている。さらにドミニク・ルブラン貿易相は、条件が整い次第、米国との交渉再開を目指す考えを示している。















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