中国、20カ国超と「グリーン鉱物イニシアティブ」立ち上げ
「責任ある貿易」強調で米国の批判回避狙う

中国が「資源大国」とされるインドネシアや南アフリカ共和国などと連携し、レアアースをはじめとする重要鉱物の経済・貿易協力を強化するグローバルネットワークを構築した。世界の重要鉱物市場をほぼ独占してきた既存の地位を一層強固にするとともに、米国主導の「脱中国」路線に対抗する狙いがあるとみられる。
24日付の中国国営通信社『新華社』によると、李強(リー・チャン)国務院総理は22~23日に南アフリカ・ヨハネスブルクで開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議に出席し、「グリーン鉱物国際協力イニシアティブ(以下、グリーン鉱物イニシアティブ)」を発表した。
リー総理は「重要鉱物の持続可能な供給は世界の資源安全保障にとって極めて重要だ」とし、「軍事目的などへの利用については慎重に対応し、リスクの回避を図るべきだ」と指摘。そのうえで「重要鉱物の互恵的協力と平和的利用を促進すべきだ」と述べ、「中国は関係国とともにグリーン鉱物イニシアティブを提案しており、各国の積極的な参加を歓迎する」と強調した。
同イニシアティブは、今回のG20首脳会議で中国が発表した政策で、インドネシアや南アフリカ、カンボジア、ナイジェリア、ミャンマーなど20余りの国と、国連貿易開発会議(UNCTAD)などの国際機関が参加する。
中国はこれらの国々とともに、政策・貿易環境の整備、技術交流と能力強化、投資・金融協力の拡大などを進める方針で、重要鉱物の採掘・生産・回収に至る全プロセスのグリーン化と、責任ある採掘および貿易の促進を図るとしている。
これに先立ち、習近平国家主席は昨年11月、ブラジル・リオデジャネイロで開かれたG20首脳会議で「中国はグリーン鉱物などの分野で国際協力を継続的に強化したい」と発言していた。約1年を経て関係国とともにイニシアティブを立ち上げ、資源ネットワークの強化に本格的に乗り出した形となった。
とりわけ、責任ある重要鉱物貿易を強調した点については、日本や韓国、オーストラリアなど同盟国とレアアース供給網を強化し、中国依存の低減を進めている米国への対抗策との見方も出ている。
米国が参加しなかった今回のG20で中国が同イニシアティブを発表したのは、米国と同盟国との連携が弱まった隙を突き、サプライチェーンへの圧力を緩和しようとする狙いがあるとの分析が広がっている。
先月、米国はオーストラリアと重要鉱物およびレアアース供給網に関する枠組みに合意したほか、日本、韓国などとも協力を強化している。ただ、ドナルド・トランプ米大統領は、台湾有事を巡る高市早苗首相の発言を発端とする日中対立には距離を置く考えを示している。
このほか、国際協力の強化を打ち出すことで、西側からの「資源の武器化」との批判をかわす狙いもあるとみられる。『ブルームバーグ』は今回の発表について、中国がレアアース政策を防御すると同時に、対外的な魅力を積極的にアピールしたと評価している。こうしたイメージ転換を通じて、電気自動車(EV)やバッテリー、半導体など先端産業における中国の供給網支配力の維持を図る狙いがあるとの見方も出ている。
さらに中国は、気候変動やエネルギー、食料分野でもG20参加国との協力強化を呼びかけた。リー総理は「世界経済は重大な挑戦に直面している」とした上で、「一国主義と保護主義が横行し、各種の貿易制限や対立・対抗が増加している」と指摘し、米国の関税政策を間接的に批判した。
その上で「G20は現実を直視し、解決策を模索しながら、団結と協力の軌道に戻るよう推進すべきだ」と述べ、「気候変動やグリーンエネルギー、食料安全保障の分野で協力を強化すべきだ」と強調した。
さらに、「世界の多極化は不可逆の時代潮流だ」と指摘し、「世界銀行、国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)など国際機関の改革を加速させ、より公平で開放的な国際経済・貿易秩序を構築すべきだ」と訴えた。
















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