EU首脳が非公開通話で「米国がウクライナに領土譲歩を迫る恐れ」と懸念
フィンランド大統領「米国が同時にロシアとも接触」

ロシアとウクライナの停戦調停を進める米国に対し、欧州首脳らが強い不信感を示していることが分かった。ドイツのシュピーゲル、キーウ・インディペンデント、キーウ・ポストなどの報道によると、4日(現地時間)、欧州首脳らの通話録音を基にこうした内容が明らかになった。
録音の中で、フィンランドのアレクサンデル・ストゥブ大統領は、米国が11月30日にウクライナと協議を進める一方で、ロシアとも接触していた可能性を示唆した。また、米国交渉団について「ウクライナとゼレンスキー(大統領)を彼らの手に委ねてはならない」と警告した。フランス側も、米国が領土問題でウクライナを裏切る可能性を懸念しているという。
報道によれば、通話は今月1日に行われた欧州首脳らの秘密協議で、参加者にはフリードリヒ・メルツ独首相、エマニュエル・マクロン仏大統領、ストゥブ・フィンランド大統領、マルク・ルッテ北大西洋条約機構(NATO)事務総長、ドナルド・トゥスク・ポーランド首相、ジョルジャ・メローニ伊首相、メッテ・フレデリクセン・デンマーク首相、ヨーナス・ガー・ストーレ・ノルウェー首相、ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長、アントニオ・コスタ欧州理事会常任議長らが含まれていた。
ストゥブ大統領は、プーチン露大統領と米代表団の会談後、米側特使でトランプ大統領の娘婿でもあるジャレッド・クシュナー氏と通話したと述べた。さらに「マイアミでの協議中、(米交渉団が)ロシアとも対話していたようだ」と述べた。ウクライナ側と議論しつつ、その内容をロシアに随時伝え、双方の立場を調整していた可能性を指摘した。
ストゥブ大統領によると、クシュナー氏はロシアとの会談を「極めて実りあるもの」とし「協議の95%は合意済み」だが、残る争点はウクライナに領土譲歩を強制することだと説明したという。米国交渉団がロシア寄りの立場を取るような発言をしたことについて、ストゥブ大統領は強い不信を示した。
また、ストゥブ大統領はクシュナー氏とホワイトハウス特使スティーブ・ウィトコフ氏を名指しし「ウクライナとゼレンスキーを彼らと同席させてはならない」と訴えた。これにルッテNATO事務総長は「私も同意だ。我々はゼレンスキーを守らねばならない」と支持した。
マクロン大統領は「裏切り」という言葉まで使い、米国への警戒感を示した。マクロン大統領は「安全保障の保証が明確でなければ、米国が領土問題でウクライナを見捨てる恐れがある」と述べた。メルツ独首相もゼレンスキー大統領に対し「今後数日間は極めて慎重に行動すべきだ」と助言し「彼ら(米側)はあなたと我々を相手に駆け引きしている」と警鐘を鳴らした。
録音記録によれば、欧州首脳らは3日に予定されていた米特使との会談についても協議したという。メルツ首相はトランプ大統領にウィトコフ氏をブリュッセルに派遣するよう求めたが、会談形式を首脳級とするか、会場をNATO本部とするかEU施設とするかなどを議論した。ストゥブ大統領は「我々は外に置かれている。中に入らなければ」と参加を訴えたが、メローニ首相は「欧州首脳がクシュナーやウィトコフと同席すれば、我々が弱く見える」として反対した。
今回の通話録音は、欧州が米国に対し抱える深刻な不信を浮き彫りにしている。ウクライナ戦争の停戦協議において欧州が締め出され、ロシア側の立場が優先されたり、ゼレンスキー大統領が孤立することへの懸念が根強いことを示している。
ウィトコフ氏とクシュナー氏は2日、モスクワを訪れ、プーチン大統領および外交政策顧問ユーリー・ウシャコフ氏と約5時間にわたり協議した。ウシャコフ氏はロシアと米国が「妥協には至らなかった」としつつ「建設的で極めて有益だった」と評価した。
しかし予想に反し、ウィトコフ氏は3日、欧州側と会談することなくモスクワから米国へ帰国した。米紙ニューヨーク・タイムズによると、次回協議は4日にマイアミで行われる予定だが、欧州側は今回も参加しない見通しだという。こうした動きにより、欧州首脳らの不満と不安はさらに高まるとみられる。













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