
運用を控えていた北朝鮮の新設水力発電所で、すでに5か月前に深刻な故障が発生していたとの分析が出た。
北朝鮮専門メディア『NKプロ』は、人工衛星写真の分析結果をもとに、6月26日から29日にかけて咸鏡南道(ハムギョンナムド)丹川(タンチョン)水力発電所の調圧水槽の一つで致命的な圧力噴出が起き、スイッチヤード(発電所の電力を送電線に供給したり受け取ったりする設備)2カ所と完成した6号発電所が破損したと報じた。
丹川発電所は、より高い位置にある三水(サムス)貯水池から水を引き入れて発電する、北朝鮮最大規模の落差を利用した水力発電所だ。三水貯水池から導水された水は、約60キロのトンネルを通って流れ下り、2基の発電所タービンを回すよう設計されている。
問題となった調圧水槽は、このトンネルの終端にあるタービンホールからわずか410メートル離れた地点に設置されている。調圧水槽は、水圧や流量が変化した際に水を一時的に吸収・放出することで、水圧管(ペンストック・ダムから発電所タービンに水を送るパイプ)やタービンを水撃作用から守る装置で、大型水力発電所の核心的な安全設備の一つとされる。
『NKプロ』は、衛星写真の分析結果から、調圧水槽の上部から水が爆発的に噴出し、周辺の斜面が大きく削られたほか、丹川発電所のスイッチヤード2カ所が水流に押し流されて消失したように見えると伝えられた。6号発電所の建物も大きく破損しており、この発電所は丹川水力発電所の1段階事業で最初に完成した設備だという。
正確な原因はまだ明らかになっていない。ただし『NKプロ』は、三水(サムス)貯水池の取水口にある機械式水門の故障や、トンネル内部のシステム異常によって水位が過度に上昇した可能性を指摘している。
いずれにしても、調圧水槽は設計された範囲を超える圧力を受け、最終的に耐えきれず崩壊性の噴出につながったとみられる。この事故による被害は相当な規模に及んだと考えられている。
民間衛星サービスのプラネットラボが撮影した最新の高解像度衛星写真を分析した『NKプロ』は、最近の画像でスイッチヤード2カ所のうち大きい方は全面的に復旧され、小さい方も部分的に再建されたように見えると伝えた。6号発電所周辺の残骸もほぼ片付けられ、トンネルからタービンホールに水を引き込む水圧管の復旧作業も、外見上ほぼ完了している状態だと付け加えた。
一方、事故の発端となった調圧水槽は、まだ再建されていないと『NKプロ』は伝えた。構造自体は複雑ではないため再建作業は比較的単純な工程になるとしつつも、外部施設基準で全体の復旧率が約85%程度であることから、「中国から輸入が必要となる可能性が高い高価なタービンなどの主要設備は、大きな損傷を免れた」と分析している。
丹川水力発電所は、北朝鮮が進めている最大規模の新規発電プロジェクトの一つで、1段階工事は当初2020年10月の完成が目標だったが、何度も遅延してきた。
北朝鮮の『朝鮮中央テレビ』は昨年11月、「丹川発電所が数年にわたる遅延の末、完成を目前に控えている」と報じていた。

















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