ソフトウェアエンジニアを辞めて溶接へ… AIがもたらした“職業大転換(JX)”
米ビッグテックではAIによる失職が現実に 「ブルーカラーこそ最も安定した職業」

アメリカ・オクラホマシティ在住のタビー・ダグラスさん(37)。数ヶ月前までモニターの前で複雑なコードを並べていた彼の手には今、溶接トーチが握られている。彼はナショナル・フットボール・リーグ(NFL)のデータを分析し、AIを使ってコンサルティングを行う「サマー・スポーツ」で、ソフトウェアエンジニアとして働いていた。しかし生成AIが仕事の領域を急速に奪い始め、今年5月に職を失った。2018年に大学を卒業して以来続けてきた、開発者の道を手放し、現在は職業学校で溶接を学んでいる。
ダグラスさんは「毎日経済」の取材に「AIがプログラミングを代替し、経営陣もAIばかりを頼りにするようになった中で“創造的な問題解決”は、もう自分の仕事ではなくなった」と語った。そんな彼が選んだのが溶接だ。「溶接は金属の特性を理解して細かく調整しなければならず、AIが簡単に真似できるものではない。何より、自分の汗の成果が形として目の前に残ることが大きな安心につながる」と話した。AIの急激な進化は、アメリカの労働市場に大きな地殻変動を起こしている。これがいわゆる“職業大転換(Job Transformation・JX)”だ。JXの中心には、かつて敬遠されていたブルーカラー職がある。ホワイトカラーの象徴だったテック産業がリストラの嵐に巻き込まれる一方、AIの影響を受けにくいブルーカラーが20〜30代にとって新たな「チャンスの場所」として注目されている。
このJXの動きはSNSでも“ヒップな文化”として広がりつつある。「TikTok」で数百万回再生される“レクシー・ザ・エレクトリシャン”が典型だ。若い女性の電気技術者である彼女は、ヘルメット姿で配線作業をする日常を投稿し、数百万人のファンを抱えている。かつて「油臭い仕事」と敬遠された職種が、今や「自由で専門的、そしてAIに奪われにくい職業」と再評価されているのだ。
アメリカの雇用統計もこの傾向を裏付ける。今年、テック企業の求人は3年前より約30%減少。大手テック企業で働く若手社員の割合も半分ほどに低下している。一方で、同じ期間に職業学校の溶接・配管・HVAC(空調)・自動車整備コースの登録者数は2020年比で20%増加。米国立教育統計センターによれば、職業学校の学生数は2030年まで年6%のペースで増える見込みだ。













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