台北中心部で無差別刃物事件
負傷者の1人がHIV保有者、二次感染の懸念
当局「現場で血液が付着した可能性があれば通報を」

台湾・台北市中心部で10人以上が死傷した無差別刃物事件をめぐり、負傷者の1人がヒト免疫不全ウイルス(HIV)の保有者であることが確認され、保健当局が警戒態勢を強めている。
台湾メディアのEBCニュースなどによると、台湾疾病管制署(CDC)は22日、20日に発生した刃物事件の負傷者であるA氏がHIV保有者であると明らかにし、感染拡大を防ぐための緊急計画を策定し運用しているという。
疾病管制署はA氏が負傷した時間帯や場所を公表したうえで、当時現場で体の傷や目などの粘膜に血液が付着した可能性がある人に対し、防疫当局のホットラインに連絡するよう呼びかけている。該当者にはHIV感染予防のための予防投薬など、必要な医療措置を提供するという。
羅一鈞・疾病管制署署長は「現場にいた人の傷口や粘膜にA氏の血液が飛散し、HIVに曝露した可能性を完全には否定できない」とし「予防的投薬を行えば感染リスクを事実上ゼロに抑えることができる」と強調した。
疾病管制署は、HIVに曝露した可能性がある場合、72時間以内がいわゆる「ゴールデンタイム」だと説明し、この期間内に予防投薬を行うことで感染を防げるとしている。
当局によると、こうした発表以降の2日間でホットラインには計21件の相談が寄せられ、このうち10人未満が正式に受理され、予防投薬が行われたという。
疾病管制署の関係者は「事件当時は現場が混乱しており、軽傷者が医療機関を受診していない可能性もある」とし「少しでも不安があれば必ず72時間のゴールデンタイム内に連絡してほしい」と呼びかけた。

HIVは後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因となるウイルスで、感染すると免疫細胞であるCD4陽性Tリンパ球が破壊され免疫機能が低下する。その結果、さまざまな感染症や腫瘍を発症し、重症化すると死に至ることがある。
HIVは保有者の血液の輸血や医療現場での針刺し事故、性的接触、静脈注射薬物の使用などを通じて感染する。
無差別刃物事件でHIV保有者が負傷し二次感染の懸念が生じた例としては、2006年にドイツ・ベルリンで発生した事件がある。ドイツ・ワールドカップを前に同年5月に行われたベルリン中央駅の開業式典に数十万人が集まる中、16歳の少年が刃物を振り回し36人が負傷した。この際、負傷者の1人がHIV保有者だったため、他の被害者への感染が懸念されたが、当局が追跡調査を行った結果、追加の感染例は確認されなかったという。















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