
ドナルド・トランプ米政権がインド洋の軍事的要衝であるチャゴス諸島をモーリシャスから直接取得する案を検討している。英国によるモーリシャスへの返還手続きが進む中、米英共同軍事基地の安全保障上の空白を懸念した米国が、直接支配権の確保に乗り出したとの見方が出ている。
7日(現地時間)、英紙テレグラフによるとホワイトハウス高官らは英国を介さずにチャゴス諸島の支配権を確保するための独自の交渉案を作成した。文書には英国とモーリシャスの返還合意に代わる案として、米政府が直接資金を投じてモーリシャス側と取得交渉を進める計画が盛り込まれているという。
トランプ政権は、英国によるチャゴス諸島の返還協定がインド洋における重要な軍事拠点の喪失につながりかねないとして強く反発してきた。米国の圧力を受け、英国政府は4月に返還合意の手続きを保留した。
英政府報道官はテレグラフに対し、「ディエゴガルシア基地の支配権が脅かされている」とした上で、「戦略的要衝に敵対勢力が足場を築くのを防ぐための措置が必要だった」と述べた。
米政府関係者もディエゴガルシア島の戦略的重要性を強調した。この関係者は、「インド洋においてディエゴガルシア島が担う情報・兵站・作戦の拠点機能は、米国の国家安全保障に不可欠だ」とし、基地の安定運用に向けて英国と定期的に協議していると説明した。
チャゴス諸島はインド洋のほぼ中央に位置する群島で、現在は英領インド洋地域に属している。このうちディエゴガルシア島には、米国と英国が共同で使用する大規模な軍事基地が置かれている。同基地は中東、アフリカ、インド洋を結ぶ戦略拠点として重要な役割を担ってきた。

この地域は1814年にフランスから英国へ割譲されて以来、英国の統治下に置かれてきた。英国は1965年、旧植民地だったモーリシャスの独立を進める中でチャゴス諸島を分離し、「英領インド洋地域」に指定した。この過程で英国は米軍基地建設のため、島に居住していた最大2,000人の住民を強制的に移住させた。
その後、モーリシャス政府が提起した訴訟を受け、2019年に国際司法裁判所(ICJ)は英国がチャゴス諸島を返還すべきだとの判断を示した。これを受け、英国政府は2024年10月、チャゴス諸島の主権をモーリシャスへ移譲することで合意した。
一方でディエゴガルシア島の米英共同軍事基地については99年間の賃借契約を結び、引き続き使用する方針が盛り込まれた。英国はその対価として、モーリシャスに年間1億100万ポンド(約216億3,200万円)を支払うことになっている。
しかしトランプ政権が返還合意にブレーキをかけ、さらには直接取得案まで検討していることで、チャゴス諸島を巡る英国、米国、モーリシャスの安全保障上の思惑は一段と複雑化する見通しだ。
海外メディアは「チャゴス諸島問題は単なる領土返還交渉にとどまらず、米国のインド洋戦略、英国の植民地支配責任、モーリシャスの主権回復、さらにはチャゴス住民の帰還権が絡む複合的な国際問題へと発展している」と指摘。その上で「米国による直接取得の検討が実際の交渉につながれば、英国とモーリシャスの返還合意は新たな不確定要素に直面する可能性がある」と分析している。















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