
米韓関税交渉の最大の難関として浮上した3,500億ドル(約51兆6,707億円)の対米投資基金を巡り、両国間で緊張感ある駆け引きが行われる中、交渉の過程で交わされた生々しい舞台裏が明らかになった。
韓国の中央日報は12日、韓国大統領室のキム・ヨンボム政策室長との単独インタビューを通じ、米韓間の投資基金交渉の具体的な経緯を報じた。報道によると、韓国政府は米国側に了解覚書(MOU)の修正案を送付したという。今月末に韓国・慶州で開催されるアジア太平洋経済協力(APEC)会議を契機に、第2回米韓首脳会談の開催が迫る中、膠着状態にある交渉の突破口を探る試みである。
キム室長は中央日報に対し「建設的な修正案を詳細に作成し、米国側に送付した。まだ具体的な回答は得られていないため、現在は待機している状態だ」と述べた。修正案は英文5ページ分で、国内トップクラスの法律家が作成に携わったという。
MOUの修正案は先月11~13日に米国を訪問したキム・ジョングァン産業通商部長官を通じ、ハワード・ラトニック米商務長官に手渡された。キム室長は「我々は最大限誠実に交渉に臨んでいる。なお、(MOU修正案に続き)米国の要求に応えるためには、米韓間の通貨スワップが必要条件であるという点も伝えたが、現時点で回答は得られていない」と述べた。
中央日報によれば、米韓間の最大の争点である投資基金の構成方式に関する対立は、8月初旬に米国側がMOU草案を送付したことにより表面化したという。キム室長は「我々は3,500億ドルを上限の概念で捉え、そのうち多くても5%程度が「エクイティ(株主資本)」であり、大部分はローン(貸付)やギャランティー(保証)であると理解していた。しかし、米国は『キャッシュ・フロー(cash flow)』と表現し、実質的にほぼエクイティを要求してきた」と説明した。
キム室長は「7月末の交渉時、我々の交渉団はラトニック長官側に一つ一つ意味を確認しながら『備忘録』を作成したが、その時点では具体的な内容に言及しなかった」と述べた。当時、韓国の交渉団は日米合意の先例を参考にしていたという。キム室長は「赤沢亮正経済再生担当大臣は、5,500億ドル(約81兆1,968億円)の投資額のうちエクイティが1~2%程度と述べた」とし、「日本側が作成しなかった備忘録まで別途用意し、慎重に交渉に臨んだ」と語った。
交渉過程で交わされた厳しい言葉も明らかにされた。キム室長は中央日報に対し「米国は韓米MOUと日米MOU案を同時に送付した後、『日本はこの案が良いと言っているのに、なぜ反対するのか』という形で圧力をかけてきた」と伝えた。さらに、非公式なルートでは「韓国を踏みつけようとしても、踏む足の方が痛むだろう」といった発言も交わされたと述べた。
米国が投資基金の収益の90%を要求したという見方について、キム室長は「それは副次的な問題だ。投資がまだ行われていないのに、収益の議論をするのは無意味だ」と反論した。
行き詰まった交渉局面を打開するため、キム室長は「米韓両国の交渉チームは、7月31日にドナルド・トランプ米大統領の前での関税交渉時の初心に立ち返るべきだ」と提案した。そして「我々の政府は、トランプ大統領の前で交渉した内容を守り、かつ両国にとって最も有益な方向で進めようとしている。米韓両国は安全保障同盟から、技術・経済同盟を包括する『アナザーレベル』へのアップグレードを目指している」と述べた。
キム室長は、今後の韓国の交渉カードとして韓国産業の競争力を挙げた。キム室長は「米国の製造業ルネサンスを実現する最適なパートナーは韓国であると述べた。もし米国が韓国の造船業と協力しなければ、造船業の発展や海軍の現代化を実現するのは容易ではないだろう」と指摘した。また、交渉過程においては企業にも逐次情報が伝えられ、共有されているとし、「企業にとっても自社の問題であるため、米国側のネットワークを活用するなど、共同で動いている」と語った。
キム室長は、「現時点は交渉の分水嶺である。多くのメッセージが米国側に伝えられており、いずれ何らかの形で近々返答があるだろう。その後は、より真剣に向き合って話し合いが行われることになる」と述べ、「楽観はしていないが、最終的にはハッピーエンディングに至るのではないか」と語った。
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