
韓国の世論調査で、若い世代の多くが「統一を望まない」という結果が出たことを受け、韓国情勢に精通するデイビッド・カン教授(南カリフォルニア大学韓国学研究所長)は、あるインタビューで「韓国の世論調査機関は『統一を望むか』という質問そのものを即刻やめるべきだ。これは根本的に誤った問いの立て方だ」と痛烈に批判した。
教授はその理由を補足した。「給与の20パーセントを生涯にわたり統一費用として負担する意思があるかと問われれば、誰も『はい』とは答えないだろう。しかし、『もし北朝鮮が崩壊した場合、その地域は最終的に誰が担うべきなのか?韓国か、それとも他の国か?』と問い直せば、回答は全く異なるはずだ」。この視点こそが、韓国社会が直面する最も現実的なアプローチだと指摘する。
さらに教授は、韓国の統一認識が著しく歪んでいると語る。韓国社会は統一を「不可避の国家課題」ではなく、「高額な費用を伴う選択肢」として扱っているという。これに対し、カン教授は「地政学の冷酷な原則の前では、統一は選択ではない。状況が変われば、周辺国は必ず自国の利益に基づいて動き出す」と強調した。
中国は自らの緩衝地帯を維持するため軍事的に介入し得る。米国も北東アジアの均衡維持を名目に関与せざるを得ない。その時、韓国が判断をためらえば、「朝鮮半島全体が韓国主導で処理される」という前提は成立しなくなる可能性がある。カン教授は懸念を込めて続けた。「韓国の若い世代は、北朝鮮を同じ民族国家として見ていない。ただ遠い北方で起こっている問題としてしか認識していないのだ」。
彼の指摘は韓国社会にとって耳の痛いが、極めて現実的だ。統一とは「民族的感情」の問題ではなく、「地域秩序と国家戦略」の問題である。問われるべきは「北朝鮮をどう扱うか」ではなく、「北朝鮮が消滅した時に韓国は何をするのか」という行為の意思である。準備を欠いた社会は、最終的に周辺国の判断に翻弄されることになる。
韓国社会は長らく統一の「費用」ばかりに目を向けてきた。しかし真に重要なのは「費用」ではなく「方向性」である。北朝鮮が崩壊した瞬間、地図上の空白地帯を誰が埋めるのか。韓国が感情論にとどまり準備を怠れば、その戦略的空白は中国、あるいは他の第3国が安全保障上の必要性から先に動く可能性も十分にある。歴史は空白を待ってはくれない。その時に問われるのは、金銭や理念ではなく、朝鮮半島の秩序全体が大きく揺らぐという、より根源的なリスクである。














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