
台湾有事の際に自衛隊を出動させる可能性に言及した高市早苗首相の発言を受け、日中間の対立が一カ月にわたり続くなかで、中国がレアアース輸出の統制を強め、日本への圧力を強めようとしているとの見方が浮上している。
7日付の『読売新聞』は、複数の政府関係者の話として、中国から日本企業へのレアアース輸出に必要な承認手続きが、通常よりも遅れていることが判明したと報じた。
政府関係者は同紙に対し、「レアアースを含む重要鉱物の輸出手続きが遅れている」と説明した。ただし、この関係者は「こうした遅延が中国による威嚇や嫌がらせによるものかどうかを判断するのはまだ早い」と述べ、現時点では慎重な見方を示したという。
一方、別の政府関係者は「中国がレアアースを利用して日本に圧力をかけている可能性がある」との見方を示したと、同紙は伝えている。
同紙はまた、7日が高市首相の国会答弁で「台湾有事は日本の存立危機事態になり得る」と発言してからちょうど1カ月となる日だと指摘。今回の中国側の動きについて、「首相発言以降の悪化した日中関係が背景にある」と分析した。
過去の事例と独占的供給
中国がレアアースを日本への圧力手段として用いる背景には、世界のレアアース供給を中国がほぼ独占している事情がある。同紙は「中国は世界のレアアース生産量の約70パーセントを占め、電気自動車(EV)、風力発電、産業用ロボットのモーターなどに不可欠だ。一部のレアアースについてはほぼ全量を握っている」と報じた。
また、同紙は「中国の輸出停滞は日本の製造業に大きな影響を及ぼす」としたうえで、「日本産水産物の事実上の輸入禁止措置に続き、中国がレアアースでも制限措置を取るかどうかが注目されていた」と伝えた。
中国は過去にも、相手国への圧力手段としてレアアース輸出の統制を行使した経緯がある。同紙は「2010年9月、尖閣諸島周辺で中国漁船と海上保安庁巡視船が衝突した後、中国政府は日本向けレアアース輸出を制限した」と指摘。当時、中国は外交的圧力と輸出停止措置を組み合わせ、事実上日本側に譲歩を迫ったと伝えている。
さらに、同紙によれば、4日の記者会見で中国商務省の報道官は高市首相の対応を改めて批判し、「日本が一方的に行動するなら、中国は必要な措置を取る。すべての責任は日本側にある」と述べ、レアアース輸出統制を含む対抗措置に踏み切る可能性を示唆したという。













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