
北朝鮮が核推進潜水艦の開発を宣言し、韓国との軍事的競争構図を誇示しようとしている。しかし現実に浮かび上がるのは、北朝鮮潜水艦戦力の深刻な限界である。数十年前に沈没した潜水艦すら一隻も引き揚げられない国が、数千トン級の核推進潜水艦を建造すると豪語する姿は、戦略的意思表示というより虚勢に近い。核潜水艦は最低でも10億ドルを要する超高額兵器であり、実戦運用には少なくとも三隻体制が不可欠だ。さらに維持費は航空母艦を上回り、米国でさえ毎年莫大な予算を投じているのが現実である。
慢性的な貿易赤字を抱える北朝鮮に、潜水艦建造に必要な精密部品を調達する余力はない。電子機器すら満足に量産できないとの指摘は比喩ではなく、潜水艦が極めて高度な統合工学の結晶であることを踏まえれば当然の評価だ。配管、電線、圧力船体、兵装システムが密集する閉鎖空間では、部品一つの変更が設計全体の再構築を招く。そこに小型原子炉を搭載する核推進方式は、北朝鮮の技術水準を明らかに超えている。

北朝鮮は過去に1700トン級潜水艦を建造し、1996年の江陵浸透事件では300トン級サンオ級潜水艦を使用した。しかし数千トン級核潜水艦は次元が異なる。もし核推進用原子炉を製造できる能力があるなら、深刻な電力不足に苦しむ都市部を先に救っているはずだという指摘は説得力を持つ。維持費の面でも、米国基準で年間約3億ドルに達する核潜水艦を北朝鮮が運用できる余地は皆無に等しい。
潜水艦部隊が北朝鮮内部で「特権階層」とされるのは、運用の危険性と難度の高さゆえだが、事故は後を絶たない。1985年の新浦沖ではロメオ型潜水艦が商船と衝突し多数が死亡したが、引き揚げは断念されたままだ。1983年には果日郡月沙里で弾薬庫が爆発し、きのこ雲が立ち上る大惨事となった。2013年にも東海で相次いで沈没事故が発生し、70人以上が犠牲となっている。
こうした現実を直視すれば、金正恩が戦術核潜水艦を誇示する姿は、かつて登場しては姿を消したキム・グンオク艦と大差ない。最新兵器は精神論や対抗意識では生まれず、技術、資本、運用能力の三位一体が不可欠だ。それにもかかわらず、韓国が核推進潜水艦構想を進めれば追随せざるを得ないという強迫観念が、さらなる無理を生む可能性が高い。結果として北朝鮮は資金を浪費し、体制内部の疲弊を深めるだけだろう。その混乱は、皮肉にも韓国に有利な戦略環境をもたらす可能性がある。
















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