
宇宙で光を放つのは星だけではない。星が生み出した惑星に集まって暮らす「生命体」もまた、光を発している。生命体が放つ光には、大きく分けて「熱放射」、「生物発光」、「超微弱光子放出(UPF:Ultraweak Photon Emission)」の3種類がある。
「熱放射」とは、外部から吸収したエネルギーの一部を電磁波として放出する現象で、温度が高いほどその放射量は増える。「生物発光」は、ホタルのように、体内の酵素や光るタンパク質を使って自ら光を生み出す仕組みだ。
そして「超微弱光子放出(UPF)」は、人間を含むすべての生命体が、生きているあいだ絶えず自ら放っている光のことで、3つのうち最も微弱な光である。これはおよそ100年前に初めて発見された。
「生体光子(バイオフォトン)」とも呼ばれるこの光は、近赤外線、可視光線、紫外線(波長200〜1000ナノメートル)の範囲を持ち、生命活動が終わると放出されなくなる。
生体光子は、生命体のみで観測される点で熱放射とは異なり、すべての生物で発生する点で生物発光とも区別される。
この光は、生命体の代謝過程で生まれる副産物である。生物発光や化学発光とは異なり、細胞の活動のなかで副次的に生じるもので、ミトコンドリアや葉緑体などエネルギーを生成する細胞小器官が主な発生源となっている。
その過程で生じるのが「活性酸素」だ。活性酸素とは、エネルギー生成に使われなかった酸素分子のことで、車にたとえれば「完全燃焼されなかった排ガス」のようなもの。
この活性酸素は、周囲の分子と反応してその分子を「励起状態」にする。励起状態の分子は、余分なエネルギーを「光子(=光)」として放出しながら、再び安定した状態へと戻っていく。

目が感知できる強度の1,000分の1
研究によると、私たちの体から放出される生体光子の量は、皮膚1平方センチメートルあたり1秒間にわずか10~1,000個程度と、極めて微量である。その明るさは、人間の目が感知できる光の強さの1,000分の1程度にすぎず、温かい物体から放射される赤外線のように、他の生物学的なプロセスや光源からの光と区別することも難しい。
最近、カナダ・カルガリー大学の研究チームがマウスを用いた実験で、死の前後における生体光子の放出現象を撮影することに成功し、その成果をアメリカ化学会の国際学術誌『Journal of Physical Chemistry Letters』に発表した。
研究チームは、個々の光子を検出できる特殊なデジタルカメラを使用し、毛のないマウス4匹について、1時間露光した2枚の写真を撮影した。1枚はマウスが死亡する前、もう1枚は死亡後に撮影されたものである。熱や光による干渉を避けるため、マウスはすべて同一温度の暗室で飼育された。
その結果、4匹すべてのマウスにおいて、死亡後には生体光子の放出量が大幅に減少していることが確認された。この研究に関与していない、チェコ科学アカデミー・光子および電子工学研究所のミハル・チプラ博士は、科学誌『New Scientist』の取材に対し、「生体光子が死後に放出されなくなるのは、血流が止まるためだ」と説明した。
酸素を豊富に含む血液は、生体光子を生み出す新陳代謝の主要な原動力の一つとされている。

健康状態を判別する補助的な指標としての可能性も――
研究チームによると、個々の細胞や特定部位ではなく、動物の全身から生体光子の放出を捉えたのは今回が初めてだという。これに先立ち、2020年には日本の東北大学の研究チームが、人間の上半身から放出される生体光子を24時間にわたり撮影・観察し、その結果を発表している。それによると、人間の生体光子放出は夕方に最も強くなり、夜間には最も弱くなる傾向があるという。
生体光子の「点火役」ともいえる活性酸素は、一般的に肉体的・精神的ストレスを受けるほど多く発生するとされている。このことから、生体光子の放出量と健康状態は逆相関の関係にあると考えられる。すなわち、光子の放出が多いほど体にストレスがかかっている可能性があるということだ。
研究チームは、今回使用した生体光子の検出技術を応用することで、今後は生体組織の状態の把握や、森林など自然環境の健全性の観察にも役立てられる可能性があると期待を寄せている。