「抗生物質も効かない」毎年数百万人が死亡…「便の錠剤」が人類を救うのか?
抗生物質耐性菌で年間500万人死亡
WHO「人類最大の脅威」と警告
便中の「有用な細菌」から作られた治療薬を試験中

人の便を集めて作った薬で、毎年数百万人の命を奪う細菌感染症を治療しようという研究が進められている。
7日(現地時間)、英BBCによると、英国の科学者たちは、抗生物質耐性菌、いわゆる「スーパーバグ」の脅威に対抗するため、人間の便を集めて作った錠剤を開発しているという。
抗生物質でも死なない変異菌であるスーパーバグは、一度感染すると、長い場合は数十年間にわたって尿路感染症や血流感染症など、様々な感染症を引き起こす。
抗生物質の過剰かつ不注意な乱用により、抗生物質に耐性を持つ細菌が急増しているが、これを公式に確認する速度が追いついていない。また、これに対応できる新しい抗生物剤の開発には、長い場合は20年かかる可能性がある。
スーパーバグの出現は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降、最大の健康危機の一つとされている。世界保健機関(WHO)は、世界中で毎年500万人以上が、直接的または間接的なスーパーバグへの感染で死亡しているとし、「スーパーバグは人類が直面する最大の健康脅威の一つだ」と警告している。
米カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部の研究陣は、2025年までに毎年1,000万人がスーパーバグ感染で死亡すると予測した。世界銀行(WB)は、スーパーバグによる医療費が2050年には1兆ドル(約143兆7,319億9,800万円)に高騰すると予測している。
抗生物質過剰使用が細菌変異を招く
BBCによると、人の便内の有用な細菌から作られた薬を通じて、腸内細菌のバランスを整える原理が、スーパーバグ感染症を治療するための方法として注目されているという。
英ロンドンのガイズ・アンド・セント・トーマス国民保健サービス(NHS)病院は、過去6ヶ月間、抗生物質に耐性を持つ細菌に感染した患者を対象に「便カプセル」の臨床実験を行っている。
「便カプセル」は、健康な人々が「便バンク」に寄付した便から作られた薬だ。便をサンプル検査し、未消化の食物を除去した後、凍結乾燥させて粉末にする。これを胃を通過して腸に到達できる錠剤の中に入れたものだ。
研究陣が患者41人を対象に錠剤を服用させた結果、健康な人の便から検出され錠剤に含まれた有用な細菌が、少なくとも1ヶ月後も患者の腸内にとどまっていたと説明した。
研究を進めてきたブレア・メリック博士は、「人間の腸は抗生物質に対する耐性の最大の貯蔵庫だ」とし、「健康な人から得られた有用な細菌がスーパーバグとの戦いを繰り広げられるという有望な兆候が発見された」と明らかにした。
また、錠剤による治療を経ると、腸内細菌の種類が多様になり、それによって新たな感染性細菌の侵入を防ぐことができると付け加えた。
人の便から抽出した成分で腸内感染症を治療する錠剤が実際に承認された事例もある。
米食品医薬品局(FDA)は2023年4月、バイオ企業セレスが開発した腸内微生物経口治療薬「ボウスト」を承認した。
ボウストは人の便をエタノールで処理して作った薬で、致命的な腸内感染症であるクロストリジウム・ディフィシル(C.ディフィシル)患者の腸内細菌バランスを回復させる。臨床実験では、薬を投与してから8週間後、患者の90%に再感染がなかったことも明らかになっている。