
ゴミ袋をまとった写真には「年を取れば捨てられるのも人生の一部」と記し、満開の桜の木を見上げる写真には「来年も桜が見られるかしら」と冗談交じりに添えながら、「老い」をユニークに表現した作品で注目を集め、「自撮りおばあちゃん」の愛称で知られた日本の写真家・西本喜美子さんが、97歳でこの世を去った。
12日、香港の『サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)』などによると、独特なユーモアあふれる自撮り作品をSNSに投稿し、国内外で注目を集めた西本さんは、今月9日、胆管がんの闘病の末に亡くなったという。
1928年、ブラジルに生まれた西本さんは8歳のときに日本へ移住。若い頃は美容師として働き、自転車競技の選手としても活動した。27歳で結婚し、3人の子どもを育てながら、長らく芸術とは無縁の生活を送っていた。
SCMPによると、西本さんが写真を始めたのはなんと72歳のとき。アートディレクターとして活動していた息子から写真を教わったことがきっかけだった。そこで「自撮り」の楽しさに魅了され、自ら画像編集も独学で習得した。やがて、その写真で多くの人々を笑顔にする存在となった。

ゴミ袋に包まれていたり、電動車いすに乗って車を追いかける姿など、「老い」をユーモアと風刺で表現した写真が注目を集め、2011年には初の個展を開催した。
2016年には初の写真集も出版。2018年からはSNSにも写真を投稿し始め、「自撮りおばあちゃん」という愛称とともに、フォロワーは40万人を超えるまでになった。
西本さんは今年5月、SNSに葉を口にくわえた茶目っ気のある写真を投稿し、しばらく入院する予定だと伝えた。そして今月5日、桜の写真とともに「来年もまた桜を見られたらいいな」というメッセージを残した。この写真が彼女の最後の作品となった。
今年5月、西本さんは木の葉を口にくわえたおどけた写真をSNSに投稿し、「しばらく入院します」と知らせた。そして今月5日、満開の桜の写真とともに「来年もまた桜を見られたら」と、控えめな希望をつづった。この写真が彼女の最後の作品となった。
その4日後、長男が西本さんのInstagramにて、彼女ががんで亡くなったことを報告した。
彼は投稿でこう綴った。
「母は72歳で芸術の道を歩み始め、多くの方々に支えられながら、人生の最終章まで豊かで充実した日々を過ごしました」

世界中のファンたちは彼女のInstagramを訪れ、哀悼のメッセージを投稿した。
「あなたの作品は私に幸せを与えてくれました。天国にも満開の桜が咲きますように」
「おばあちゃんの遺したものは、私たちが『老いること』について考え直すきっかけをくれました。優雅でユーモアがあって、人生を楽しく生きる勇気を今も与えてくれています」
「何かを始めるのに遅すぎることはないと教えてくれてありがとうございました」
「いつも前向きな姿勢と素敵な笑顔に力をもらっていました」――。
そんな感謝と別れの言葉が、世界中から寄せられている。