
「犬よりも従順ね。こんなバカな男がもっといればいいのに」
そんな挑発的なセリフが飛び出すゲームが今、中国で論争の的となっている。タイトルは「美人局ゲーム(撈女遊戲)」。金品目当てで男性を誘惑する「ゴールドディガー」を題材にしたこの作品は、リリース直後からゲーム配信プラットフォーム「Steam」で1位に躍り出た。
だが急速な人気とは裏腹に、「女性蔑視だ」との非難の声が噴出している。
プレイヤーは男性キャラクターとなり、恋愛感情を利用して金銭を搾取しようとする女性たちと関わる。物語の展開はプレイヤーの選択によって分岐し、登場する「美人局」キャラはすべて女性。インフルエンサーから野心家の実業家まで、彼女たちは贅沢を引き出すために巧妙な策略を仕掛けてくる。
「本気で愛されてるか知りたい? どれだけ金を使ったか見ればいい」、そんなセリフが登場するゲームは、女性を一面的に描き、性別ステレオタイプを助長しているとの指摘が相次いだ。
一方で、「恋愛を装った詐欺に警戒心を持たせる教育的な側面がある」と擁護する声もある。実際、中国では2023年時点でロマンス詐欺による被害総額が20億元(約409億円)を超えているとされ、ゲームが描く「現実」も無視できない。

批判を受けて、制作会社はタイトルを「ロマンス詐欺防止シミュレーション」に変更。「女性を攻撃する意図は一切なく、現代の恋愛に潜む感情のグレーゾーンについて議論が起きることを望んだ」と釈明した。
だが事態は収束していない。ゲームを監督した香港出身の映画監督マーク・フー氏は、現在複数の中国SNSでアカウントが凍結された状態だという。
BBCの取材に応じた女性アーティストのシュイクン氏は「論争と分断を煽り、炎上で稼ぐ典型的な商業戦略だ」と批判。「撈女(美人局)」というワードそのものが女性蔑視的であるという声も少なくない。
それでもゲームの売上は右肩上がりだ。現在、中国のPCゲームランキングではトップ10に入り、昨年大ヒットを記録した『黒神話:悟空』をすでに上回っている。
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