
米航空宇宙局(NASA)の次世代宇宙望遠鏡で「惑星ハンター」の異名を持つTESSが、地球から73光年離れた場所で太陽より小さい恒星を周回するスーパーアース1つと小型ガス惑星「ミニ・ネプチューン」2つを発見した。このうち恒星から最も遠い惑星は平均温度が66度で、生命体が存在可能な「温帯」に位置すると研究者らは推定している。
マキシミリアン・ギュンター氏(Maximilian Günther)を含む米マサチューセッツ工科大学(MIT)物理学部のポスドク研究員らのチームは、地球から73光年離れた場所でM型の恒星「TESS観測対象天体(TOI)270」とそれを周回する惑星「TOI-270 b」、「TOI-270 c」、「TOI-270 d」からなる惑星系を発見したとする研究結果を29日、国際学術誌「ネイチャー・アストロノミー」に発表した。TOIは昨年4月から観測を行っているTESSが発見した天体のうち、惑星を持つ可能性が高い天体を指し、後ろの数字は発見順を示す。
TOI-270は大きさと質量ともに太陽の約60%で、表面温度は太陽の3分の2程度のM型の赤色矮星だ。赤色矮星は太陽より質量が小さい主系列星で、中心温度が低く、光も弱い。M型は赤色矮星の中で最も温度が低い星を指す。TOI-270はがか座付近で発見されたが、がか座は南半球でしか見えないため、日本からは観測できない。

TOI-270惑星系では3つの惑星が発見された。恒星に最も近いTOI-270 bは地球より25%大きく、質量は1.9倍のスーパーアース型岩石惑星だ。水星と太陽間距離の13分の1という近距離を3.4日周期で公転している。恒星に近いため、恒星から受けるエネルギーに基づく平均温度は約254度と推定される。
TOI-270 cとdはガスで構成された惑星で、地球よりやや大きい。cとdはそれぞれ地球の2.4倍、2.1倍の大きさで、質量は7倍と5倍だ。恒星をそれぞれ5.7日と11.4日の周期で公転している。3つの惑星はすべて月のように自転周期と公転周期が同じで、一方の面だけが恒星を向いて回っていることが判明した。
TOI 270 cとdは「ミニ・ネプチューン」に分類される。ミニ・ネプチューンはネプチューン(海王星)のようなガス惑星でありながら地球よりやや大きい惑星を指す。太陽系にはミニ・ネプチューンに分類される惑星は存在しない。天文学者らは地球のような岩石型惑星とネプチューンのようなガス惑星の間に位置するミニ・ネプチューンを、惑星形成の謎を解く「失われた環」と評価している。

恒星から最も遠いTOI-270 dの平均温度は約66度と推定される。生命体が存在可能な温度帯だ。しかし研究チームは「この惑星は大気が非常に厚いため、温室効果により実際の温度はさらに高くなる可能性がある」と指摘している。
ただし、この惑星系で生命体が存在可能な惑星が発見される可能性もあると研究チームは分析している。ギュンター研究員は「TOI-270 dは恒星から1,000万km離れているため、居住可能領域は約1,500万kmに位置するだろう」とし、「TOI-270は爆発などがほとんど起きない非常に静かな恒星のため、この惑星系は居住可能な惑星を探すのに適している」と述べた。
研究チームは3つの惑星の特性解明と追加惑星の探索に注力する予定だ。ギュンター研究員は「TOI-270は惑星科学のディズニーランドだ」とし、「TESSで探査すべきすべての条件を備えた素晴らしい実験室だ」と語った。
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