
私たちが日常的に食べているジャガイモが、実は「トマトの子孫」だったという驚きの研究成果が発表された。
その起源は約900万年前、南米に自生していた野生トマトと、塊茎を持たない植物「エチュベロスム」との自然交雑にあるという。
この研究は、中国農業科学院(CAAS)のホアン・サンユェン氏率いる研究チームによって行われたもので、国際科学誌『Cell』に先月31日付で掲載された。
研究チームは、栽培ジャガイモ450種と野生種56種を対象にゲノム解析を実施。その結果、トマトの祖先が持っていた「SP6A」という遺伝子がジャガイモの塊茎形成を「開始」させ、エチュベロスム由来の「IT1」遺伝子がその成長を「加速」する役割を担っていたことが明らかになった。
塊茎とは、栄養を地中に蓄えるために茎や根が肥大化した構造のことで、ジャガイモの最大の特徴だ。これによってジャガイモは、極端な環境下でも生き延びることができた。
研究チームは「異なる植物間の自然交雑が、まったく新しい形質の進化を引き起こし、新たな種の誕生につながることを示す好例」として、この発見の意義を強調している。
さらにホアン氏は、「塊茎の進化によって、種子や受粉を必要とせず、芽だけで個体を増やすことができる。この特性が、温暖な草原から寒冷な高山地帯まで、南米の広範な生態系でジャガイモが急速に広がる鍵となった」と述べている。
私たちの食卓に欠かせないこの作物が、かつては「野生トマトの姿」だったとは――進化の妙が、あらためて脚光を浴びている。

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