JPモルガン・チェースなどが出勤を義務化
ニューヨークのオフィス空室率が18%から15%に
保険会社などが投資を再開

オフィス出勤を義務付ける米企業が増加し、コロナ禍以降停滞していたニューヨークのオフィス市場に動きが出てきた。融資返済期限が迫る中、投資家を見つけられずデフォルト(債務不履行)が相次いだ昨年とは様変わりの状況だ。
フィナンシャル・タイムズ(FT)は現地時間25日、ニューヨークのオフィス物件を対象とした商業用不動産担保証券(CMBS)の規模が、今年110億ドル(約1兆6,200億円)に拡大し、2021年以来の最高水準を記録していると報道した。
CMBSとは、商業用不動産ローンをまとめて証券化した投資商品の一種だ。CMBS発行規模の拡大は、オフィスなどの物件への融資が増加し、市場でそのリスクが低く評価され、投資が活発化していることを意味する。
コロナ禍以降、ニューヨークのオフィス空室率は大幅に上昇した。在宅勤務の普及により、企業がオフィススペースを次々と縮小したためだ。さらに、政策金利の急騰でオフィス物件の投資収益率は急落。昨年12月時点で、オフィス物件のCMBSデフォルト率は11%に達し、2008年の金融危機時の最高値(10.7%)を上回った。
しかし、企業が在宅勤務を中止しオフィス復帰を命じたことで、状況は一変した。JPモルガン・チェースやBNYメロン、ベライゾンなどニューヨークに拠点を置く大手企業は、今年から全社員に対し週3~5日の出勤を義務付けている。従業員間の協働を強化し、経済の不確実性に迅速に対応するためだ。不動産サービス会社CBREによると、マンハッタン・ミッドタウンの第2四半期の空室率は15.5%で、昨年同期の18.2%から大幅に改善しているという。
6番街に大規模なオフィスを所有するパラマウント・グローバルは、先月末に負債のリファイナンス(借り換え)のため、9億ドル(約1,330億円)の資金調達に成功した。数ブロック離れた場所では、米プライベートエクイティファンド大手のブラックストーンが、不動産開発会社のフィッシャー・ブラザーズと850万ドル(約125億円)の資金調達に成功。このうち6億ドル(約886億円)以上がCMBS市場を通じて調達された。さらに、ボルネード・リアルティ・トラストが所有するAppleのニューヨーク本社も、4億5,000万ドル(約665億円)の融資を借り換えた。
特筆すべきは、象徴的な物件(トロフィーアセット)だけでなく、古い建物への投資も増加していることだ。フィナンシャル・タイムズは、6番街やパーク・アベニュー、タイムズスクエア、ペンシルベニア駅周辺などの主要商業地域でこの傾向が顕著だと指摘し、空室リスクの低い大規模なオフィス物件が、再び安全資産とみなされ始めていると評価した。米投資銀行(IB)フォートレスの資産担保証券部門長マリオ・リベラ氏は「しばらく市場で敬遠されていたオフィス物件が再び注目を集めている」とし、「オフィス復帰を要求する企業の方針が背景にある」と分析した。米プライベートエクイティファンド大手KKRの不動産クレジット責任者であるマット・セイラム氏も「空室率が低下し、純賃料が上昇傾向にある」とし、「投資家は、一部の不動産物件が底を打ったとみている」と述べた。KKRによると、今年のニューヨークのオフィスを原資産とするCMBSの主要な買い手は保険会社だったという。
ただし、この好転は一部に限られるとの指摘もある。リノベーションが行われていないか、空室率の高いオフィスは依然として投資誘致が難しく、二極化が進んでいるとの分析だ。ビーチ・ポイント・キャピタルのストラクチャード・クレジット部門責任者ベンジャミン・ハンサカー氏は「持てる者と持たざる者の物語だ」と述べ、「パーク・アベニューやセントラルパークビューのオフィスからわずか2ブロック離れるだけで状況は深刻さを増す」と語った。
コメント0