
新型コロナウイルスの変異株「BA.3.2」が世界的に流行の兆しを見せている。この変異株は、セミの幼虫のように長期間潜伏した後に出現したことから、通称「シカダ(Cicada)」とも呼ばれる。
日本経済新聞は16日、昨年から世界各地でBA.3.2の感染例が確認され、急速に拡大していると報じた。2024年11月に南アフリカで初めて検出された際には感染は広がらなかった。昨年4月に欧州で散発的な感染が確認された際も、感染拡大には至らなかった。
しかし昨年9月から感染者が急増し始め、今年に入り感染が本格化した。米国では昨年末から今年初めにかけて、患者から採取した検体からBA.3.2が検出された。米疾病対策センター(CDC)によると、今年2月11日時点で少なくとも23か国、4月時点では33か国以上に感染が拡大している。
国内でも1月19日から25日にかけて、東京都内の医療機関で採取された検体からBA.3.2が確認された。ただし新型コロナは5類感染症に分類されており、ウイルスの型を特定する大規模な検査は実施されていない。そのためBA.3.2の正確な感染者数は把握できていない。
国内ではBA.3.2は数ある変異株の一つとみなされてきたが、大幅な変異を遂げた点が注目されるようになった。CDCによると、BA.3.2は以前の流行株であるJN.1系統と比較して遺伝子塩基配列に70~75か所の変異が確認された。これは既存のウイルスとは遺伝的に大きく異なることを示している。
これにより、既存の免疫では十分な効果が得られない可能性が指摘されている。東京大学医科学研究所の佐藤教授は「ワクチン接種によって生成される抗体が十分に機能しない可能性がある」と懸念を示した。
新型コロナウイルスは変異を繰り返し、感染者を増やしてきた。ウイルスが変異するのは、宿主である人間が免疫を獲得するためだ。ウイルスは変異によって人間の免疫を回避し、増殖を図る。
これに関連して佐藤教授は「以前流行したJN.1が進化的な行き止まりに陥ったようだ」と述べ、生存が困難になったウイルスが潜伏し、大きな変異を蓄積したBA.3.2が広がり始めた可能性があると推測した。続けて「誰にも気づかれないまま進化を遂げて再び出現するとは想定外だった」と語った。一度潜伏したウイルスが再び流行するのは極めてまれだと日本経済新聞は伝えている。
世界保健機関(WHO)はBA.3.2を監視下の変異株(VUM)に指定した。新型コロナは通常、夏と冬の年2回流行する傾向があるため、専門家も今後BA.3.2の感染者が増加するとの見方を示した。
ただしBA.3.2によって、2020~2021年のパンデミック初期のような行動制限を伴う事態に発展する可能性は低いとみられる。佐藤教授は「現時点ではBA.3.2が世界で既存の変異株を一気に置き換えるほどの感染力は持っていない」と述べた。オミクロンがデルタを置き換えたような事態にはならないとの見解だ。
WHOも現時点でBA.3.2が他の変異株と比較して、重症化リスクの上昇や入院・死亡の増加を示すデータはないとしている。
それでも、糖尿病や高血圧などの基礎疾患を持つ人や高齢者は引き続き感染への警戒が必要だと専門家は指摘する。BA.3.2が今後さらなる変異によって感染力や重症化リスクが高まるかどうかは予測が難しく、手洗いやうがいといった基本的な感染対策の継続を呼びかけた。













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