
日本の国技である相撲で、安青錦新大(21歳、本名ダニーロ・ヤブグシシン)がウクライナ出身者として史上初めて優勝を果たした。ロシアの侵攻でウクライナを離れ避難生活を送っていた彼は、来日からわずか3年で相撲史上2番目に早い初優勝を達成した。
安青錦は23日、福岡国際センターで行われたプロ相撲『大相撲』の今年最後の本場所、『九州場所』の決勝戦で横綱・豊昇龍智和(26)を破り、優勝を手にした。
安青錦が相撲の道のために日本へ渡ったきっかけは、2022年のロシアによるウクライナ侵攻であった。『朝日新聞』の報道によると、侵攻勃発直後の2022年春、関西大学相撲部のコーチ・山中新大氏から「そちらは大丈夫か」と連絡があった。当時、安青錦は母親とともにドイツへ避難していた。数日後、今度は安青錦自身が山中コーチに「日本に避難できるか」と連絡を取り、これが彼の運命を大きく変えることとなった。
二人の出会いは2019年、大阪で開催された『世界ジュニア相撲選手権』であった。当時3位に入賞した安青錦は、力強い脚力と安定した腰の動きで一際目を引いた。特に、自分に敗れた選手の涙を見て真っ先に手を差し伸べる姿に、山中コーチは彼が技術だけでなく人間性も兼ね備えた選手であると感銘を受けた。「こんにちは、何歳ですか?」との山中コーチの問いに、安青錦は「15歳である」と答えた。当時の世界選手権には高校生も出場資格があったが、中学3年生の安青錦が入賞を果たしたのである。その後、山中コーチがSNSを通じて連絡を取り、安青錦は自身のトレーニング映像を送って指導を受けるなど、交流を続けた。
山中コーチの支援を受け、安青錦は2022年に来日し、本格的に相撲力士として成長していった。山中コーチは安青錦について、「戦争で大学に通えなくなったと聞いた」と振り返り、「夢を追うために家族と離れて日本に来たが、時折寂しそうな表情を見せていた」と語った。そして、わずか3年余りで、16回目の出場となる本場所で日本相撲界のトップ力士の一人として頭角を現した。これは日本相撲史上、史上2番目に早い初優勝の記録である。
優勝後のインタビューで安青錦は、「正直、とてもうれしい」と述べ、「緊張もあったが、自身の相撲ができてよかった」と感想を語った。日本に来て3年で初優勝を果たしたことについては、「優勝したという実感が湧かず、観客の歓声もあまり聞こえなかった」と明かし、「師匠の教えをしっかり守った結果が出た」と振り返った。来年の大会に向けては、「今回以上の結果を出せるよう努力したい」と意気込みを語った。













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